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『デジタルゲームの技術』出張編

ゲーム開発現場で活用できる「プロジェクトマネジメント」の手法

松井 悠(編集部) 2011-09-06
『デジタルゲームの技術』出張編

2011年7月にソフトバンククリエイティブから発行された『デジタルゲームの技術 開発キーパーソンが語るゲーム産業の未来』。全9人によるインタビュー集となるこの書籍の内容を抜粋してお届けしていきます。

第7回は、ゲーム開発現場で活用できる「プロジェクトマネジメント」の手法と題して、株式会社スクウェア・エニックスCTO/ テクノロジー推進部 コーポレートエグゼクティブ/ ファイナルファンタジー XIV テクニカルディレクター橋本 善久さんのインタビューを掲載します。

ゲーム開発現場で活用できる「プロジェクトマネジメント」の手法

昨今のゲーム開発の大規模化、複雑化が進むにつれてプロジェクトマネジメントの難易度も飛躍的に難しくなっています。アジャイルソフトウェア開発やC C P Mなどの手法を参考に、ゲーム開発の効率やスケジュールの精度を高める独自の体系を作り上げ、実際のゲーム開発の現場に取り入れたのが、株式会社スクウェア・エニックスのCTOである橋本さんです。
開発者にとって、そして会社にとって幸せになれる作業環境を実現する効率的なゲーム開発の手法、いわば橋本流ゲームプロジェクトマネジメントの手法とその導入例をお話しいただきました。

プロフィール

CTO/ テクノロジー推進部 コーポレートエグゼクティブ/ ファイナルファンタジー XIV テクニカルディレクター
橋本 善久 はしもと よしひさ

1 9 9 7 年東京大学工学部卒後、株式会社セガに入社。プログラマー、ゲームデザイナーとしてソニック系タイトルなどに参加の後、「ソニックワールドアドベンチャー」ゲームディレクター、ゲームエンジン「H e d g e h o g E n g i n e 」技術ディレクターを経て、2 0 0 9 年株式会社スクウェア・エニックスに入社。2010年より現職。

CTO(チーフテクノロジーオフィサー)のお仕事

―― 橋本さんの役職であるCTO について、お伺いします。日本のゲーム業界では珍しい肩書きだと思いますが、どういった経緯があったのでしょうか。

橋本:確かにゲーム業界の中ではCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー=最高技術責任者)という肩書きは珍しいでしょうね。しかし、これからさらに高度化、複雑化していくゲーム開発において、各プロジェクトがそれぞれ個別に自力でエンジン、ライブラリ、技術の開発をしていくスタンスでは、もう世界のトップディベロッパーと勝負することは到底不可能です。個々のエンジニアがどれだけ有能な人材であっても、個人の力でできることには限界があります。総合力で戦わないとこれからの時代生き残ることはできません。そのため、全社の技術的総合力をうまく引き出すためのディレクター、ファシリテーター※1 が必要になります。
また同時に経営視点、ビジネス視点での判断も行う必要があります。

※1ファシリテーター:Facilitator。会議などにおいて、議論をスムーズに調整する役割。

―― その存在として、橋本さんがいる、と。

橋本:はい、それが私の役割です。具体的な活動として、私自身はテクノロジー推進部という部門を持っていまして、その中で将来的に社内において汎用的に使用することが可能なゲームエンジンを開発しています。また、これとは別に必要に
応じて個別のプロジェクトに対してテクニカルディレクター、テクニカルアドバイザーとして技術戦略面の支援をしています。小さな例では外注プロジェクトが使用するミドルウェアの選定に対してのアドバイスをしています。大きな例では「ファイナルファンタジー XIV 」に対して2010年12月からテクニカルディレクター、つまり「ファイナルファンタジー XIV」のプログラミング部門の責任者として深くプロジェクトに関わっています。
私は2009 年春からスクウェア・エニックスに在籍していますが、最初からCTO という肩書きだったわけではありません。当初はゲームエンジンを開発するための新規プロジェクトのプロデューサー兼ディレクターとして、どちらかというと社内的にも水面下で活動をしていました。その活動の間、弊社社長の和田へは細かく定期的に開発状況を報告し続けており、ゲームエンジン開発プロジェクトの推移や私のその他社内活動を見守る中で、私の仕事の進め方やスキル、判断への信頼というのが構築され、最終的に和田からの提案としてCTO に就任することになりました。

―― それが、今年の……。

橋本:はい、正式に就任したのは4月です。つい先日ですね。

―― 技術に関して全社で整合性をとろうっていう動きが出始めたのも、やはり橋本さんが入社された2年前あたりからだったんでしょうか。

橋本:私の入社する以前から、弊社では全社で整合性をとろうという試みはありました。実際にゲームエンジンも制作されています。その上でさらにその動きに対して踏み込むという捉え方をして頂ければ良いかと思います。

―― 橋本さんのCTO の業務としては全社共通のエンジンの開発があるわけですが、これからお話をしていただくプロジェクトマネジメントもCTO としてのお仕事なのでしょうか?

橋本:CTO は平たく言うと「全社の技術ディレクター」な感じですので、表面上はプロジェクトマネジメントとは直接は関係のない仕事と言えます。たまたま私がCTO 業務と同時にプロジェクトマネジメントに対して自発的にメスを入れているという形です。しかし、CTO の仕事は単に技術を見つめるだけではダメで、経営視点、ビジネス視点、コンテンツの品質や生産効率の視点、あらゆる視点で開発に対する最適化をかける仕事だと考えています。ですから、私にとっては、すばら
しい技術基盤を構築することと、すばらしいプロジェクトマネジメントを行うことは分けて扱うことができないと捉えていますので、私がプロジェクトマネジメントの方法論に対して力を入れるのも必然と考えています。

プロジェクトマネジメントとは何か

―― それでは、プロジェクトマネジメントについてお話しをお伺いしていきたいと思います。まずは、プロジェクトマネジメントとはどういうものなのか、というところから。

橋本:プロジェクトマネジメントは最近、プロジェクトファシリテーションといった言い方も登場していますが、一言で表現すれば「1人~複数人によるなにかしらのゴールを持つ活動を、与えられた期間、人数、お金を用いてできる限り目標通りに安全に着地させるための方法論」と言えるでしょう。
昔のゲーム開発はものすごく少人数で作られていて、感覚論や経験だけでもなんとなく成立することが可能だったと思うんです。ファミコン、スーパーファミコン、PlayStation くらいの時期までは複雑性も規模もさほどではないので、しっかりしたマネジメントの方法論がなくてもどうにかなってしまったことが多かったはずです。しかしPlayStation 2、PlayStation 3とハードウェアの性能が上がるにつれてその上で動くゲームの内容が巨大で複雑になり、それはそのままゲーム開発チームの巨大化と複雑化を招きました。巨大で複雑になった開発チームの運営は感覚的、経験的なあてずっぽうのやり方ではもはや御すことが難しくなり、そこでプロジェクトマネジメントの重要性が改めて高まってきているのだと思います。

―― プロジェクトマネジメントの考え方は、どこかにルーツがあるんでしょうか?

橋本:ルーツという意味では、正確なところって私も把握しきっているわけではないんですけれど、海外でも、日本でも太古の昔からいろいろな考え方はあったと思います。人が集まって何かをする際には少しでも効率よく、品質良く成果を出したいことは今も昔も変わりませんから。例えばピラミッドを作る際にはものすごい人数の労働者を動員するわけですから、きっとすばらしいマネジメントの方法論があったと思うんです。
Project Management Body of Knowledge※2( PMBOK)というプロジェクトマネジメントの国際基準を集約した本やその認定資格のようなちゃんと体系付けられたものも存在はしています。他には、例えばトヨタ式※3 のカイゼンとか、カンバン方式とかもありますね。

※2Project Management Body of Knowledge:アメリカプロジェクトマネジメント協会が編纂するプロジェクトマネジメントの知識体系。
※3トヨタ式:トヨタ自動車の業務改善手法の総称。ジャストインタイム、カンバン方式、カイゼンなど、もともとは自動車製造工程で使用されていたが、現在はさまざまな企業の現場で採用されている。

―― ジャストインタイム方式の生産工程ですね。

橋本:ああいった工程管理をしっかり行う方法論も立派なプロジェクトマネジメントの一種だと言えます。なにかしらの集団があって、それの最適化を行う活動はすべてプロジェクトマネジメントと言えるんじゃないでしょうか。例えば軍隊をどう管理・運営するかも典型的なプロジェクトマネジメントの対象だと思いますし。
時間やお金、そしてメンバーの気持ちなどもしっかりケアしながら、最適な着地点を見つけるための方法論としてプロジェクトマネジメントは進化してきたのではないかと思います。

―― 橋本流、ゲーム業界流のプロジェクトマネジメントについては、現在、「ファイナルファンタジーXIV」と……。

橋本:はい、テクニカルディレクターとして参加している「ファイナルファンタジーXIV 」でも適用していますし、先ほど触れましたゲームエンジンのプロジェクト、それから新規で立ち上げた別のプロジェクト。この3つそれぞれに適用して、現時点で一定の成果は出ています。

―― 3つとも手法はほぼ一緒のものなのでしょうか?

橋本:原則的には同じです。プロジェクトの性質や規模に応じてほんの少しだけ運営ルールをマイナーチェンジしているだけです。

―― プロジェクトマネジメントの導入に至った経緯はどういったものなのでしょうか。

橋本:以前の会社で、全体で数十人程度の小~中規模のPlayStation 2向けのプロジェクトのゲームディレクターをやりまして、その際は自分でリードプログラマもやりながらも比較的順調にプロジェクトを終えることができました。そしてその後にプログラマーだけでもピーク時数十人、デザイナーやプランナー、その他を加えた大規模のPlayStation 3とXbox 360向けのプロジェクトをディレクションしました。この時にももちろんそれなりにプロジェクトを完遂できたのですが、同時に限界も感じました。

―― それは1人の人間が全工程を管理することに?

橋本:1 つにはそうです。普通にやっていたら物理的に管理しきれる人数ではない。そしてもう1つ。ハードウェアの開発難易度が劇的に上昇しているということも難しさの要因でした。PlayStation 2 や Wii までの世代のゲーム開発とPlayStation 3やXbox 360の世代のゲーム開発を両方やった事のある人ならわかりますが、この世代を区切りに難易度がかなり変わっています。さらにこのプロジェクトはゲームエンジンも自力で作りつつ、技術的な挑戦もいくつか入れていたので、「作ってみないと分からない」項目も多く、プロジェクト運営には大変に苦労しました。
要約すると「管理しないとならない対象は多いし、それぞれの見通しも立て難い」ということになりました。しかし、発売日は決まっていて、どうにか入れ込まないとならない。残業や徹夜も増える。その結果、プロジェクトの後半にはデスマーチ的なしんどい状況が生まれてしまい、スタッフ達も肉体的にも精神的にもかなり消耗したと思います。
最終的には一定の内容で発売に持っていくことはできたのですが、やはりスタッフにはしんどい思いをさせてしまいましたし「ここはもっとああできた、そこはもっとこうできた」という反省点もいろいろ残りました。自分としてもゲーム開発プロジェクトのプロセスを見直す必要性を強く感じているタイミングで、現在の会社でゲームエンジンを作るということになりました。
ゲームエンジンの開発というのは3桁の人数規模より低く抑えることはでき、人数としては中規模ですが、総合的な難易度はもっともっと高くなります。ゲームエンジンを作るということは、未来の技術、未来のワークフローを作るということですから、誰もやってないところもいっぱい掘らないとならない。だから開発進行の予想が大変難しいわけです。
でも、「何年以内にこういったものは作る」っていう目標を立てなければいけない、「目標を着実に実行しなければいけない」という中で、どうやってそれをうまく着地させるのか、と考えたときに、「これはもう勘とか経験でやっちゃ駄目だな」と。もちろん今までの仕事の中でも、独自の方法論というのはある程度はあったんですが、ただやっぱりここは真摯に世の中にある手法を学び直そうと思いまして。
本やネットで先人の知恵を大量に、本でいえば100冊ぐらい買って来て、一通りインプットして、その上で自分なりに整理して、取捨選択して、アレンジして、組み上げていったという感じですね。

―― その期間は、どのくらい……。

橋本:いろいろ学習して、考察して、最初の設計に落とし込むまでは、他のことをしながらですが2ヶ月くらいです。まだゲームエンジンプロジェクトの人数も少なく、正式にプロジェクト承認される前の準備期間に行いました。プロジェクトとして正式に開発スタートするのと同時に設計した方法論を試験的に走らせながら、その後半年くらい設計をチューニングしました。

―― 導入期間で半年間。

橋本:いえ、導入自体はすぐ終わりました。効果も即出ましたし。方法論の改善の為の調整で半年ということです。私の手法では、「スプリント」と呼ばれる4週間単位で仕事を回していきます。4週間経ったら振り返り、そして次の4週間の計画をして、また4週間走って、また振り返ってというサイクルの中で、振り返るタイミングで、方法論自体をチューニングしてきましたね。

―― 最初の導入例がゲームエンジンのプロジェクト?

橋本:はい、ゲームエンジンのプロジェクトの制作をあげるための期間を設定していたのですが、そのマイルストーンに対して約束していた内容以上のものとして提示することができました。それからいろいろな経緯があって「ファイナルファンタジーXIV 」を手伝うことになったので、現在はプログラマー達に対してまず導入をして、少しずつ慣れていってもらってる段階です。

このインタビューの続きは、書籍「デジタルゲームの技術 開発キーパーソンが語るゲーム産業の未来」でご覧いただけます。

デジタルゲームの技術 開発キーパーソンが語るゲーム産業の未来

著者 松井 悠
仕様 A5版 336頁 1色
定価 2,730円
出版 ソフトバンククリエイティブ
筆者紹介/ 松井 悠 (編集部)
フリーライターとして1996年より活動。得意なゲームジャンルは、Player VS Playerのゲーム全般。 デジタルゲームを競技として捉える「e-sports」の普及のため、IGDA日本デジタルゲーム競技研究会世話人、世界最大のデジタルゲーム競技大会World Cyber Games日本プロデューサーや、中韓政府主催のInternational E-sports Festival日本プロデューサーを務める。 2011年より、オンラインゲーム「C9」公認ナビゲーター。2012年より、「Red Bull 5G」プロジェクトアドバイザー。近著に「デジタルゲームの教科書」、「デジタルゲームの技術」(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)。

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