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GAMER’S EXPRESSの読者の皆様、ご無沙汰しております。連載の更新がしばらく止まっていましたが、これまでのように女性目線でさまざまな角度からスタークラフトを中心としたプロゲーミング界を紹介していきたいと思います。新年一発目は2011年を振り返りつつ、2012年の注目すべき点をまとめてみました。
世界各地におけるスタークラフト2の盛り上がりと非韓国選手の台頭
すでにこの連載をお読みになっている方はご存じかと思いますが、リアルタイムストラテジーの雄、「スタークラフト2」が発売されたのが2010年7月。その3か月後には韓国で『GSL(Global StarCraft II League)』というスタークラフト2のプロリーグが開始され、それまでの「スタークラフトのプロゲーミング大会といえば韓国」という流れに大きな変化はないかのように思われました。ところが2011年、アメリカの『MLG(Major League Gaming)』を筆頭に世界各地で大小さまざまな大会が開催されるようになり、世界のスタークラフト2ファンがプロの大会に熱狂しはじめました。
この背景には、欧米選手の実力向上があると思われます。選手層が厚いのは相変わらず韓国ですが、一部の欧米選手は韓国のトッププレイヤー達と肩を並べるレベルにまで成長しました。スタークラフト1時代の「韓国選手には絶対に勝てない」という先入観は切り捨てられ、欧米のスタークラフトファンにとってより身近な選手らの台頭に希望を抱いたファンの応援が大きくなるのは当然の流れ。同時に観戦の楽しさを知った多くのスタークラフト2ファンが改めて韓国のトッププレイヤーのファンになるなど、あっという間に世界各国の交流が盛んになりました。もはや国内よりも大きな声援が受けられるようになった韓国選手は海外へ飛び出して行き、これまで雲の上の大会だと思っていた韓国のプロリーグに手が届くようになった海外選手は韓国へ乗り込むという構図が、現在できあがりつつあるのです。
2012年はこの国際交流の流れがさらに加速するものと見られ、各国の大会が真のグローバル大会としてどのような盛り上がりを見せていくのか注目されます。またこれまであまり世界に進出していなかった台湾や中国、日本などアジア各国の躍進にも期待したいところです。
韓国で根強いスタークラフト1人気、さまざまな試練乗り越え圧倒的支持
先ほど「韓国のスタークラフト2プロゲーマーが国内よりも海外で大きな声援を受けるようになった」というお話をしましたが、この要因のひとつには韓国内での持続的なスタークラフト1人気があると思われます。
2011年下半期、韓国スタークラフト1プロゲーミング界は大きな転換期を迎えました。12チームあったプロゲームチームのうち何と3チーム(MBC GAME HERO、Wemade FOX、Hwaseung OZ)が運営を放棄、韓国eスポーツ協会(KeSPA)の懸命のスポンサー探しも失敗に終わり、3チームは解散となってしまったのです。しかもゲーム専門チャンネル『MBCゲーム』が音楽チャンネルへの移行を宣言、ゲームチャンネルは『On Game Net』一本となり、リーグは規模縮小を余儀なくされました。
しかし韓国スタークラフト1プロゲーミング界は、この逆境を見事に乗り越えたのです。KeSPAは解散した3チームからエース陣と若き有望株を集めたドリームチーム『第8ゲーム団』を結成し、既存のチームの選手らは異例の3か月オフシーズンを利用して故障した腕や、頭痛肩こりの原因となる顎、レーシックなどの手術を相次いで受け、新シーズンに向けたコンディション調整を行いました。また、ひとつになったゲームチャンネルには人気解説陣が集結し、ファンと選手の意見をふんだんに反映させた日程や試合方式に生まれ変わったプロリーグが11月に開幕。試合会場は連日満員御礼となるなど、改めて韓国におけるスタークラフト1プロゲーミング界の人気を実感させられました。
2012年も引き続き新生プロリーグに注目ですが、忘れてはならないのが個人リーグの再開。たったひとつの優勝カップをかけてプロゲーマーの中でもトップレベルの選手たちだけが繰り広げる熱き戦いと華やかなエンターテインメントを、今年も期待したいと思います。
世界進出に向け一歩前進!スタークラフト2初の日本人プロゲーマー誕生
ここまで世界におけるスタークラフトプロゲーミング界の盛り上がりについてお話してきましたが、日本もこの流れにほんの少しだけ乗りつつあるということはご存知でしょうか。
2011年は日本でも、大小さまざまなスタークラフト2のアマチュア大会が開かれました。中でも『WCG日本予選』、『ESWC日本予選』といった世界のステージへの登竜門となった大会は、大きな意味があったと言えるのではないでしょうか。見事予選を勝ち抜いてWCG日本代表となったのはbreek(小林大起)選手、ESWC日本代表となったのはnemuke(尾崎大悟)選手でした。特にbreek選手は『WCG 2011 グランドファイナル』にて3勝の快挙を成し遂げ、日本人が世界を相手に勝負ができるということを立派に証明してくれました。
また、年末にはドイツのプロゲームチーム『Type』がnemuke(尾崎大悟)選手とPSiArc(西村直紘)選手とのプロ契約を正式に発表。ついに、スタークラフト2初の日本人プロゲーマーが誕生しました。
2012年は国内で開かれる大会にもこれまで以上に注目するとともに、やはり2011年同様、海外大会における日本人の活躍に大いなる期待がかかります。
女性ファンは2012年、韓国スタークラフト1と台湾スタークラフト2に注目すべし
ここまで2011年を振り返ってきましたが、実は問題点もいくつか残されています。始まったばかりのスタークラフト2においては不正行為などプロゲーマーの質が問われるような事件が発生したほか、大会運営での不正行為や経費に関する問題が取り沙汰されました。成功を収めているかに見えるスタークラフト1も第8ゲーム団のスポンサー探しは避けては通れないものですし、日本も結局国内でのeスポーツやスタークラフトの知名度アップには至っていないのが現実です。2012年にはこれらの問題点がどう改善されていくのかも、慎重に見守っていきたいところです。
最後に特記しておきたいのがスイニャン的には2011年、台湾プロゲーミング界の面白さが群を抜いており、2012年も引き続き台湾に大注目であるということです!韓国スタークラフト1時代から証明されてきたように、eスポーツにおけるエンターテインメント要素は特に女性ファンにとっては欠かせない部分なのですが、なぜかスタークラフト2では実力がすべてという雰囲気なのです。しかし思わぬところでエンターテインメント性を重視するスタークラフト2の世界が展開されていたのです。そう、それが台湾プロゲーミング界です。
この連載はスタークラフトのプロゲーミング界をよく知らない人向けに書いていますが、すでに観戦を楽しんでいる人も台湾のことはよく知らないという人が大部分なのではないでしょうか。次回はなぜか世界でもあまり知られていない台湾プロリーグ『TeSL』について詳しく紹介したいと思います。お楽しみに!
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