
前回台湾のeスポーツリーグ『TeSL』のご紹介をしましたが、私ついに念願の台湾取材に行ってまいりました。TeSLって何ぞや?という方はまず前回の記事からご覧になってみてください。では、いまだ興奮さめやらぬスイニャンの台湾レポートをお楽しみください。
金曜日のTeSLはeスポーツを愛する人々が作り上げる情熱放送
台湾eスポーツの拠点は、台北市の北東部にある内湖サイエンスパークと呼ばれるハイテク企業オフィス街の近くに集まっています。金曜日の試合が行われる場所は、内湖区基湖路に位置するTeSLスタジオ。ここは台湾電子競技連盟のオフィスに併設される形で作られたスタジオで、小規模ながらも観客席が設けられています。このビルの2階にはWayi SPIDERの母体企業のアパレル部門オフィスがあり、この一角を間借りして選手らの控室として使用していました。また選手及び実況解説陣のヘアメイクなどもここで行われていました。
実はこのスタジオ、Wayiの社長であり台湾電子競技連盟の会長でもある黄博弘氏が建てたものだそうで、オンラインストリームに必要な機材も全て金曜日の試合のために購入したそうです。しかも放送は業者に任せるのではなく台湾電子競技連盟の職員たちが直接行っているとのことで、すべての面においてeスポーツに対する情熱が伝わってくる、そんな印象を受けました。
台湾のeスポーツファン
試合開始の1~2時間前から、少しでもいい席で観戦しようという熱狂的なファンたちが門の前に並び始めました。ファンの男女比は1:1といった感じでしたが、平日ということもあり年齢層はやはり低めといった印象でした。以前にもご紹介しましたが、TeSLは日本でもおなじみの韓国産FPS「スペシャルフォース」、同じく韓国産でありアジア各国で人気を博しているレースゲームの「カートライダー」、そして世界的にもeスポーツの人気種目となっているアメリカ産RTSの「スタークラフト2」の3種目で構成されています。ところが今回の台湾取材で見たところによると、種目別に見るとカートライダーとスペシャルフォースのファンが多く、スタークラフトは残念ながら少なめでした。しかし関係者によると「スタークラフトのファンは年齢層が少し高く社会人が多いことと、性格的におとなしくインドアタイプの人が多いため観戦にはあまり来ないが、視聴率は3種目の中で一番高い」とのことでした。
ここでの目玉は何と言ってもファンが選手らと交流ができる、ということでしょう。試合終了後、ファンからのサイン攻勢に気さくに応じたり、記念撮影や雑談をしている選手らの姿が多く見受けられました。
私は日本のスタークラフト界でもおなじみ、この連載でもインタビューを行ったことのあるGama Bearsの4Leaf(SorrowRush)監督とTt ApollosのApro隊長とともに観客席の最後列に座りました。目の前の席にはWayi SPIDERの控え選手Lin選手もいるという大変豪華な環境の中で、色々と解説していただきながら楽しく観戦することができました。
土日のTeSLは台湾有数のケーブルテレビ局によるプロフェッショナル放送
一方、土日の試合は先のTeSLスタジオからほど近い内湖区瑞光路に位置する「緯来電視網」で行われています。この一帯にはさまざまなテレビ局が集まっており、緯来電視網もケーブルTVにおいて6つのチャンネルを保有する台湾有数のテレビ局です。TeSLはその中の「緯来育楽台」というチャンネルで放送されています。ビルの1階フロアに3つの収録スタジオと2つの控室、メイクスペースと編集スペースなどが所狭しと配置されていますが、こちらには残念ながら観客席は設置されていません。番組を作り上げているのはまさに放送のプロフェッショナルスタッフで、特に試合直後に行われるハイライトシーンの編集などはまるで職人技といった感じでした。
TeSLの取材を終えて……
月並みではありますが、やはりテレビで見るのとは全然印象が違いました。生放送ならではの緊張感は画面からはなかなか伝わって来ませんし、試合中の選手たちの真剣な表情などは画面にあまり映し出されないので、その様子を見ることができるのは会場で観戦する人の特権だと思います。
ちょっと意外だったのは台湾ファンがかなりおとなしかったこと。eスポーツ先進国とも言われる韓国では、とにかく会場の熱気がものすごく歓声などもかなり大きいですし皆で観戦を楽しんでいる様子がうかがえるのですが、台湾はまだそこまでは至っていないようでした。
そのおかげで幸か不幸か選手らが観客の様子から戦況を予想するといったいわゆる「耳マップ問題」などは起きずに済んでいるようです。しかし選手席と観客席がだいぶ近いうえに選手がブースに入っていないため、もし大きな歓声などが起きれば耳に入ってくる可能性が高いです。また実況解説席が別室にあるため観客席では実況解説を聞くことができないのも、必然的に観客にある程度のゲーム知識が求められることとなり、韓国と大きく違う点であると言えます。今後このあたりは改善の余地があるのではないかと感じました。とはいえ全体的に台湾は大変素晴らしいeスポーツ文化を形成しており、今後さらに発展させていこうという情熱と努力も垣間見ることができました。そして、選手たちが真剣にゲームに取り組む姿は非常に好感が持てました。最後にお世話になったTeSL関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。
いかがでしたでしょうか。次回は台湾プロゲームチームGama BearsとWayi SPIDERの練習室の様子をお伝えしますので、皆様お楽しみに。
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