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小説は現実と違います。しかし人間は文字を読みながら想像し、文字からでさえ、体験を作りだすことができます。虚構に現実感を与えるのは人間です。フィクションでは、それを味わう人間の能力をどれぐらい引き出すか、そして引き出したものをどのように利用するか、ということが最も重要です。
ゲーム世界におけるキャラクターの圧倒的な知的存在感
たとえば、エンターテインメントにおけるAIは、完全な本物を目指すわけではありません。それは本物を目指しながら、一方でユーザーが「それが知性だ」と思ってしまう心理的な仕掛けを利用して、ゲーム空間上に知的な存在感をもたらすことが目標です。
例えば、シューティングゲームではAIがユーザー・キャラクターに向かって、たくさんの弾を撃ちます。そうすることで、ユーザーの中には危機意識と生存本能が呼び出され、ユーザーの心理の上にAIが生きている脅威として顕れることになります。また、恋愛ゲームでは、AIに可愛い女の子の画像と声を付与することで、ユーザーから性的な欲求を引き出し、キャラクターを性的対象としてユーザーの心理の上に描き出しているのです。
だからキャラクターAIを研究する人は、「リアルなAI」(AIそのものの賢さ)を探究しながらも、一方で同時に「人間がゲーム世界の中でキャラクターを知性だと思い込む様々な心理的な仕掛け」についても研究しなければなりません。その二つの掛け算こそが、ゲーム世界におけるキャラクターの圧倒的な知的存在感を産み出すのです。
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