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日本LoL界の人気解説者aska氏スペシャルロングインタビュー
前回は『e-Sports SQUARE AKIHABARAプレス発表会』の模様をお伝えしました。実はこのとき記事には書きませんでしたが、私が密かに大注目していた人物がいたのです。それは「League of Legends (LoL)」で解説席に座っていたaska氏です。可愛らしい外見もさることながら、LoLの豊富な知識を生かした解説で絶大な人気を博しています。そこで早速私スイニャンが取材を敢行してまいりましたので、LoLに詳しい人もそうでない人も、是非aska氏の魅力あふれるインタビューをご堪能ください。
プロフィール
所属 | DetonatioN |
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生年月日 | 1991年8月30日 |
学歴 | 慶應義塾大学 環境情報学部 3年在学中 |
経歴 | 2013年11月 Tt eSPORTS presents LoLオンライントーナメント 解説 2014年2月~ League of Legends JAPAN LEAGUE 解説 |
■いちプレイヤーとして語るLoLのあれこれ
――まず、LoLを始めたきっかけから教えてください。
僕は元々「Counter Strike」や「Call of Duty」など、FPSのゲームをプレイしていたのですが、今でも親しくしている「True Combat Elite」というFPSゲームで知り合った仲間の一人がLoLを勧めてくれたのを機に皆で始めました。時期としては約3年前、LoLのシーズン1が始まってしばらく経った頃ですね。
――LoLの実力はいかがですか。選手として活動する予定はありませんか。
実力はシーズン2の頃がピークだったと思います。一番上のレベルであるチャレンジャーを目指すのは厳しいと思っているので、今はそのすぐ下のダイヤモンド1まで上げてキープしている感じです。僕は韓国の友達が多くて韓国サーバーで大会にも出ていたんですが、彼らが(徴兵制度の為)軍隊に入隊して、今はプレイができないんです。せっかく彼らとチーム活動をしていたので、彼らのいない間、僕は別の方向で楽しもうと思っています。今のところ大会に出るよりも観戦や解説のほうが楽しいので、現段階では選手として活動するつもりはありません。
――LoLの魅力はどんな点だと思いますか。
「Dota」や「StarCraft」のようなMOBA(※1)やRTS(※2)は自分には無理だと思ってすぐやめてしまいましたが、LoLはカジュアルでとっつきやすかったため長続きしました。しかもFPSやMMOなどをやっていた僕にとってこれほど頻繁にバランス調整が行われるゲームは初めてで、毎週パッチで新しい戦略が生まれたり強いチャンピオン(※3)が変わったりするというのが新鮮でしたね。次は何が強くなるんだろうと考えたりできるところが魅力だと思います。
※1 | Massively Online Battle Arenaの略。2チームに分かれたプレイヤーがそれぞれの拠点を制圧することを目的としたゲーム |
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※2 | RealTime Strategyの略。リアルタイムで進行する戦局に対応しつつ、戦略を立てながら敵と戦う。 |
※3 | プレイヤーが操作するキャラクター。LoLの場合、登場するチャンピオンの数は100種類を超えており、現在でも定期的に追加されている。 |
――これからLoLを始めようと思っている人や初心者に何かアドバイスをお願いします。
LoLの面白いところは、チャンピオンの数が非常に多く(開発元による)バランス調整が頻繁に行われるので、弱小と思われていたチャンピオンがあるときを境に再評価されることもかなり多いですね。例えば中国の元プロゲーマーのTabe選手が、ミッドレーンと呼ばれるマップ中央のレーン(※4)でしか活躍できないと思われていたチャンピオン「アニー」を、初めてサポートの役割として運用したことで世界的に一気に流行り、今では定番となっています。考えることが好きな人は、プロですら気づいていない戦術を生み出せる可能性もあると思います。もし自分の気に入ったチャンピオンの評価が低くても、他のチャンピオンと組み合わせて使うことで強くなるのではないかといった発想を持ってプレイすると、新たな楽しみが生まれるんじゃないでしょうか。
※4 | フィールド上に存在する3本の主流通路。上からトップレーン、ミッドレーン、ボットレーンと呼ばれる。 |
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■観戦者として見たLoLのeスポーツシーン
――現在、一番注目しているプロシーンや大会を教えてください。
今一番世界でレベルが高いと言われているのが韓国のプロシーンで、北米や欧州がそれに次ぐ形なのですが、僕は韓国の試合ばかり見ています。OnGameNet主催の『LoL Champions』は毎シーズン欠かさず見ていますし、『LoL Masters』という新しい大会もチェックしています。韓国のプロシーンの特徴は非常に保守的で、中国シーンのように奇抜なチャンピオンの選択をすることはほとんどありません。北米シーンではお互いアグレッシブすぎて韓国では信じられないようなミスをすることもあって、見せ物としては北米のほうが面白いのかも知れませんが、僕は堅実なスタイルのほうが好きなので韓国の大会をよく見ています。
――好きな海外プロゲーマーはいますか。
CJ Entusの大ファンでFrostとBlazeという2チームがあるんですが、僕はトップと呼ばれるマップ上部のレーンを担当しているので、同じくトップレーンを担当しているShy選手とFlame選手が好きです。チーム練習を中心にやる選手が多い中、Flame選手は他の選手に比べて「Solo Queue」という個人練習のゲームモードをよくやっており、個人技のレベルが非常に高い選手です。しかもイケメンなので、韓国でも女性ファンが極めて多いです。残念ながら彼らは契約の都合でプレイ配信はできないんですが、Flame選手のプレイはゲーム内の「スペクテート機能(※5)」を利用して以前からよく見て参考にしています。
※5 | 観戦モード。 |
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――では、国内で注目している選手や仲の良い選手は誰ですか。
まずはOzone RampageのAotaka選手ですね。彼も韓国のシーンに注目しているうえに同じトップレーン担当ということもあって、意見の合うところが多い選手です。純粋に彼が日本で一番上手いトップレーン担当の選手であると思っているので注目しています。もうひとりはDetonatioN Rabbit FiveのAwaker選手です。彼とは個人的にも親交があり、よく一緒に遊んでいます。彼のプレイは本当に安定していて、非常に理論的な選手なんです。相手の動きを読む能力や試合全体の流れを把握することに長けているので、Awaker選手を中心にDetonatioN Rabbit Five全体にも注目しています。
――日本が世界のレベルに追いつくための一番の課題は何だと思いますか。
ひとことで言うとマクロ面の知識や戦術ですね。具体的に言うと、タワーやドラゴンなどのオブジェクティブを獲るためにキルを取るという意識が足りないのかなという風に感じます。例えばキルは取っているけどその場所や相手が重要ではないため、キルを取ったところでオブジェクティブの獲得につながらないということが非常に多いです。これは韓国がずば抜けていて日本のチームだけが足りていないというわけではないのですが、その部分を改善していけばもっとレベルが上がるのかなと思います。
■もっと知りたい! aska氏の生い立ちや素顔に迫る
――帰国子女とのことで、LJ LEAGUEでも流暢な英語を披露して話題になりましたね。
小学校時代をインドにあるアメリカンスクールで過ごしたので、授業で英語を使い外国語としてフランス語やスペイン語を学びました。僕は学校で日本語を国語として勉強したことがないので、母語は英語です。そして中学の終わりに日本に帰国し、インターナショナルスクールに通っていました。その後一度イギリスの大学に通っていたんですが、やりたいことが変わったので、日本に帰国して慶応に通っています。
――では、日本語の習得はどのようにしたのですか。
両親は日本人なので家では日本語を話すことのほうが比較的多く、喋ることは小さいときからできました。でも勉強したことはなかったので漢字が読めない、熟語を知らない、何だコイツって感じでした(笑)。ところが中学の頃に「三国無双」というゲームをやって原作が「三国志」というものらしいと知り、読んでみたところ面白かったので、辞書を片手に歴史小説を読みあさったんです。そのおかげで人並みに漢字が分かるようになり国語力も伸びました。なので、ゲームがきっかけです(笑)。
――PCゲームではLoL以外にはどんなゲームをしていますか。また、他の趣味はありますか。
6歳ぐらいの頃に「Unreal」というFPSを姉と一緒にやったのが一番最初で、あとは「Age of Empires」もやっていました。その他MMOも遊んでいましたが、競技的なタイトルはFPS一辺倒でしたね。そして3年前にLoLを始めましたが、今もたまに「AVA」をやっています。他の趣味は読書ですね。だいたい2~3日に1冊のペースで読んでいます。あとは小学校高学年の頃から囲碁をやっていて、今も続けています。他にはサッカー観戦が大好きでドイツのドルトムントというチームの大ファンなので、毎週朝早く起きてというか夜更かしして見ています(笑)。
――女性ファンも多いようですが、理想のタイプを教えてください。
ファンなんていませんよ!(笑)しかも、理想のタイプ? ちょっと待ってください!(笑)ええと…そうですねえ。知的好奇心が強く、何か分からないことがあったときに誰かに聞こうとか放っておこうというタイプではなく、一緒に考えようとしてくれる女性が好きです。外見ですか? 自分があまりガッシリしていないので、しいて言えば華奢な女性がいいですね。
■人気解説者としての地位を確立したaska氏の魅力とは
――解説を始めたきっかけから聞かせてください。
僕は以前から身内でワイワイする目的でツイッターをやっていたんですが、ちょうど1年前ぐらいからLoLをやっていそうな人を100人ぐらいフォローしてLoLの情報をツイートしたりプレイヤーと交流したりするようになったところ、ツイッターをやっているLoLプレイヤーの間で知られるようになったんです。それがきっかけでDetonatioNのLGraNさんと知り合いになり、Tt eSportsの大会の解説をやることになりました。
――自分の解説において自信のある点や聞いてもらいたい点はどんなところですか。
韓国のプロシーンをチェックしている割合が高いので、そのあたりの知識は多いのかなと思います。LoLでは使用禁止にするチャンピオンと使用するチャンピオンを試合前に選ぶ「バンピック」という時間があるんですが、そこで韓国の戦略に関する話を盛り込んだりしているので、そういった部分は皆さんに聞いてもらいたいですね。
――では、自分の解説において課題はありますか。
僕はわりとじっくり考えて失敗がないように喋りたいタイプなので、あまり自信のない意見だと口にするのをためらってしまうんです。海外の解説を聞いていても、彼らはその場その場で思ったことをどんどん言っていて、後々ゆっくり考えてみると間違っているという発言はいくらでもあるんですよね。もちろん間違えないのが一番ですが、間違えることを恐れるあまり解説の質が薄っぺらくなるぐらいなら、もっと思ったことをどんどん発信していきたいです。
――解説者として、そしてeスポーツに携わる人間として、目標は何ですか。
僕はOnGameNetの英語解説を担当しているMonteCristo氏を尊敬していて、本当に目標にすべき人物であると思っています。彼のすごいところはその場その場で的確なことを言うだけでなく、初心者から上級者まで幅広く誰が聞いても何か得られるような解説をするんです。自分は足元にも及びませんが、誰が見てもためになる解説ができるようになれればいいですね。eスポーツに携わる人間としてはこれといって大きな目標はないんですが、僕は平凡ないちプレイヤーとしてやっていくんだろうと思っていたので、こういう機会をいただいた以上は自分のできる範囲でLoLの普及に貢献できたらと思っています。
――最後にファンの皆さんや読者の皆さんにメッセージをお願いします。
いつもツイッターや会場で温かいお言葉をかけてくださってありがとうございます。解説をする上で非常に励みになっています。そしてLoLに興味はあるけど今からやっても上手い人に追いつけないんじゃないかと考えている読者の方々もいるかも知れませんが、先ほども言ったようにLoLは戦略が激しく変わるゲームであり、強豪チームですらひとつのパッチで大きく崩れたりすることもあるんです。なので、自分が新しい戦略を開拓してやるというぐらいの気持ちで、楽しんでもらえればと思います。
私も聞きたいことが山ほどあったうえaska氏もインタビューが初めてということもあり、思いがけずロングインタビューとなりましたが、楽しんでいただけたでしょうか。この連載の読者の皆さんはスイニャンといえばStarCraftというイメージが定着しているかと思われますが、aska氏の解説に触れてからLoLの大会も頻繁にチェックするようになりました。プレイに興味のある人はもちろん、ちょっと気になるという人は毎週日曜日に行われている『LJ LEAGUE』の配信をチェックしてみてはいかがでしょうか。さらに3月30日(日)にはe-sports SQUAREにて『LJ LEAGUE』今シーズン最終戦のオフライン大会が予定されていますので、都合があえば観戦に行ってみるのもいいかもしれません。
http://e-sports-square.com/ljl/
http://sc-times.net/