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HOT6iX CUP観戦
2014年12月7日(日)。この日我々は東大門(トンデムン)へ向かった。午後3時から東大門(トンデムン)デザインプラザにて、HOT6iX CUPのベスト4と決勝戦が開催されるためである。大会に出場する選手はKT Rolster(以下、KT)所属Zest選手、MVP所属MarineKing選手、JinAir所属sOs選手、CJ所属sKyHigh選手の4名。会場は近未来的なデザインの大きな建物で、その中にあるホールが大会の会場だ。今回主催のGOM TV側が何とVIP席を用意してくれたおかげで、我々は寒空の中並ぶことなく入場することができた。
VIP席が準備できるまでの間、我々はプレス席に案内された。記者はこれまで何度も韓国取材を行っているため、韓国には顔見知りの記者が多い。いつものように彼らにあいさつをしてからENZA選手の紹介をすると、invenというeスポーツニュースサイトから突然インタビューの依頼を受けた。
ENZA選手は基本的な質問に答えたあと、この日の試合で誰を応援するかという質問に対して、「KT練習室を訪問したのでZest選手を応援しなければならないと思うが、僕はテランプレイヤーなのでMarineKing選手かsKyHigh選手に優勝してもらいたい」とコメント。これが後ほどどのような結果を生むか、このときは知る由もなかった。
ENZA選手もまた選手生活の長いプレイヤーであるため、知り合いの選手は多い。この日は元ウォークラフト3プロゲーマーのDayFly選手とMaka選手が会場を訪れており、元ウォークラフト3日本代表として海外大会に参加したこともあるENZA選手は、彼らとの思いがけない再会を喜んでいた。
さて、ついに試合開始である。最初はベスト4の2試合が行われた。最初の試合はMarineKing vs Zest。初戦から熱い戦いが繰り広げられ、ENZA選手はどちらを応援すれば良いのか分からぬまま、とにかく試合に見入っていた。結果は3:2でテランのMarineKing選手の勝利。もうひとつのベスト4はsOs vs sKyHighで、こちらは同じテランであるsKyHigh選手を応援していたが、残念ながら3:0でストレート負けを喫してしまった。
この試合で我々は、ハングルで「日本から来ました」と書いた応援ボードを掲げ、放送カメラに映ることに成功した。するとなんと解説者の一人が、「こちらの方はENZA選手ですね。先日プロチームの練習室を訪れたそうですよ」とコメントしているではないか。今回の訪韓を通じて、少しずつ知名度も上がってきているようで大変喜ばしいことである。
ベスト4の戦いの結果、決勝戦のカードはsOs vs MarineKingとなった。ENZA選手はやはりテランのMarineKing選手を応援していたが、結果は4:1でsOs選手が圧倒的な実力を見せつけての優勝となった。「僕が応援する選手っていつも負けちゃうんですよね」とぼやくENZA選手の言うとおり、試合開始前に行ったinvenのインタビューで彼が唯一名前を挙げなかった選手の優勝という結果には、もう笑うしかない。
その後、優勝したsOs選手のプレスインタビューが行われた。5列ほど並べられた長テーブルに各メディアの記者たちがノートパソコンを広げて座り、挙手をしてマイクを受け取った記者たちが次々に優勝選手へのインタビューを進めていく。ENZA選手は「本当にスポーツのプレス席といった感じですごいですね」と言いながら、インタビューの様子を後ろから眺めていた。その後GOM TV側の配慮によりsOs選手との記念撮影も行われた。
すべてのプログラムが終了しいざ帰ろうと会場の外に出ると、なんと偶然、準優勝したMarineKing選手に遭遇。近くにいたMVPチームのイヒョンソプ監督に許可をもらい、記念写真を撮ることができた。ENZA選手が「P imba」と声をかけると、MarineKing選手はニヤッと笑いながら「P imba」とオウム返し。これはsOs選手の使っているプロトスという種族が強すぎるという意味のスタークラフト2用語であり、まるでテランプレイヤーの合言葉のようになっている。二人の気持ちが通じ合ったかのようで、なんだか微笑ましい。
過去に自ら海外大会に出場した際にオフライン大会を見る機会がたくさんあったというENZA選手であるが、「海外でスタークラフト2だけの大会を観戦するのは初めてです。ひとつのタイトルでここまで盛り上がっているのはすごいですよね。韓国ではスタークラフト2の人気が落ちていると聞いていたのに、大勢の観客が集まっていて驚きました」と話していた。人気が落ちているというのはあくまでもスタークラフト1やリーグオブレジェンドに比べてという話であり、決して人気がないわけではないということを実感したようだ。
おわりに
2014年12月8日(月)、ついに帰国日である。空港へ向かうリムジンバスの中で「あっという間だったなあ」と繰り返すENZA選手。今回の訪韓を振り返って「多くのアドバイスを受けたことで自分の練習方法が固まり、気持ちがとても楽になりましたね。練習をしてみないとまだ分からない部分も多いので、とにかく早く練習がしたいです」と語り、一刻も早くPCの前に座るべく、帰国の途についた。
帰国後、彼はツイッターで「今回韓国に行かせてくれた上司と協力してくれた他の方々、つないでくれたスイニャンさんには感謝してもしきれない。ありがとうございました」との書き込みを残した。社会人としてはごくごく当たり前のひとことであるが、こういう配慮できるゲーマーは意外と少なかったりする。記者にとっても、本当に楽しく有意義な訪韓となった。この場を借りてENZA選手とCROOZの皆様、そして現地で歓迎してくださったeスポーツ関係者の皆様に感謝の意を伝えるとともに、今回の訪問記を締めくくろうと思う。
最後に、長文に最後までおつきあいいただいた読者の皆さんにも感謝したい。今後ENZA選手がどのような活躍を見せてくれるのか、共に見守っていただければ幸いである。
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