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SIG-Glocalization#13レポート 後半

小野憲史(ゲームジャーナリスト) 2014-12-18
SIG-Glocalization#13レポート 前半はこちら!

◆会社ごとに正解は異なる!? さまざまな意見が飛び出したパネルディスカッション〜SIG-Glozalization #13

NPO法人IGDA日本グローカリぜーション部会(SIG-Glocalization)が11月15日に開催した「アプリの海外展開、どうしていますか?」の第二部では、海外展開に積極的なアプリ会社によるパネルディスカッションが行われました。パネリストはリンクキット竹内啓二氏、サマータイムスタジオ弘津健康氏、Nubee Tokyo成沢理恵氏、イーアップ大信英次氏で、司会は部会世話人のエミリオ・ガジェゴ氏(DICO)がつとめました。

リンクキットはオリジナルIPにこだわり、受託開発も行わない硬派なインディゲーム企業。サマータイムスタジオは沖縄から世界市場を狙うアプリ開発スタジオ。Nubee Tokyoはシンガポールを拠点にスタートし、東京と台湾に開発スタジオを展開した(現在は東京に集約)国際色豊かな企業。イーアップを立ち上げた大信氏はコンシューマで海外受託の経験が豊富と、規模も戦略も異なる会社ばかりです。

エミリオ氏も「海外展開に唯一無二の正解はなく、自社の体力やコンテンツの性格、予算規模などにあわせて方法論が異なります」と前置きしました。そして、同じ質問に対しても会社ごとに違った答えが聞けると思うので、自分にあった答えを聞いて参考にしてほしいと語り、さまざまな質問をぶつけていきました。

◆そもそも、どうして海外展開を始めたのか?

最初の質問は「どうして海外展開をすることにしたのか」。竹内氏は「今や日本のスマホ課金市場は世界一だが、競争が激化することは数年前からわかっていたので、海外展開を前提にしなければインディでは生きていけないことがわかっていた」と回答しました。そのため『サムライディフェンダー』では企画・コンテンツの設計・プログラミングまで、すべてを海外展開前提で進めたといいます。現在は第二弾の『スノーワールド』をリリースしたところで、今後もすべて海外展開前提でやりたいと答えました。

成沢氏は「そもそも売れる市場と環境があるのに、売らないのはもったいない」としつつ、前職でコンソールゲームのプロデューサーをしていた反動もあるといいます。コンソールではパッケージ流通のため、現地販路の確保、パッケージやロム生産における費用などを考慮しなくてはならず、海外に出したくても出せなかったことも多かったとか。それがアプリ市場ならチェックボックスに印をつけるだけで配信できるため、やらない理由がないとのこと。これについては弘津氏も同感としつつ、できるだけ言語に依存せず、直感的に遊べるゲームを出して、ローカライズコストを抑えていると語りました。

同じくコンソールゲームの開発を数多く手がけた経験のある大信氏は、当時の経営判断が大きかったといいます。海外営業をはじめた当時はWiiとニンテンドーDSの全盛期でしたが、次第に勢いが衰えてくるという経営判断があり、すでに圧倒的なボリュームとスケール感を有していた海外の大手パブリッシャーに対して受託営業を始めたとのこと。4−5年間で15本程度の開発案件を得るなど順調でしたが、世界的な景気停滞と急激な円高で契約が取れず、生き残りのためにソーシャルゲームにシフトせざるを得なかったそうです。

その後、中国企業への転職を経て独立した大信氏は、「ワールドワイド前提」「子供向けアプリ」「各地域への最適化(カルチャライズ)」をキーワードに掲げつつ、現在は自社パブリッシングの準備を進めているとコメント。もっとも過去に商社でアパレルや玩具を扱っていた経験から「アプリも最終的には現地開発に集約されていくのかな……」と見通しを語りました。

◆狙った市場にリーチする難しさ

続いての質問は海外で狙っている市場や言語数について。これまで1年半で10本くらいリリースしてきたという弘津氏は、当初は英語ローカライズからスタートし、現在は韓国語対応も行っているとのこと。ウェブの翻訳サービスの使用から初めて、英語についてはネイティブの海外担当が担当するまでになりました。今後は台湾や韓国にも広げていきたいとのこと。もっとも、これらはインゲームのみで、アプリサイトの説明文については8カ国語対応をすませていると語りました。

成沢氏は原則として、全タイトルで日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語に対応するようにしており、今のところ欧州向けのゲームを開発していないため対応していないが、今後欧州のお客様にも受け入れられるゲームを配信する際には、ぜひFIGS(フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語)にも広げていきたいといいます。また費用対効果としつつも、タイ語とインドネシア語は興味があるとしました。

竹内氏も日本語・英語・繁体字・簡体字に加えて、『サムライディフェンダー』ではFIGSにも対応したそうです。日本語版の時点から台湾でダウンロード数が多かったので、繁体字のローカライズから始めたと語りました。もっとも欧州は調子が良くなかったため、『スノーワールド』ではアジア言語を優先させ、あとから英語とドイツ語だけローカライズしたそうです。「FIGSはひとくくりにされがちだが、IとSは優先順位が下がるのが現状」(竹内氏)

大信氏は「アクティビジョン向けのゲームを開発していた時は、平均8−12言語(欧州のみ)で開発しており、かなりローカライズに気を配った」と振り返りました。一方ソーシャルゲームでは、ここ数年で北米・中国・台湾・韓国をおさえるのが業界の基本になっていると説明。今後はインドネシア、タイ、ベトナムなどが有力な候補になっていくと言います。もっともコンテンツによる部分もあるため、「リリース地域を広げるか絞るか、最初に決めて開発するべき」だとしました。

もっとも、なかなか思い通りにいかないのも事実。弘津氏は「この地域に受けるはず」と思って作っても、正解率は3〜40%程度だといいます。「欧米向けにリアル調のグラフィックにした」はずが総ダウンロードの7割が日本市場だったり、「北米を狙った」はずがルーマニアで受けたり。日々データをみながら仮説と検証を繰り返しているといいます。

成沢氏は『神界のヴァルキリー』では、中国(本土+台湾)、日本、北米の順にダウンロード数が多いと明かしました。特に台湾では昨年、Google Playの最優秀アプリも受賞しており、日本以上に知名度が高いそうです。また中東諸国で数は極めて少ないものの、10万円以上の課金額があったとのこと。「あまりに極端な例で分析不可能でしたが、ここにヒットの種が眠っているかもしれません」(成澤氏)

竹内氏は『サムライディフェンダー』が日本語版にもかかわらず台湾のアプリマーケットでランキング1位をとったため、急いで繁体字にローカライズしたと語りました。すると中国本土の企業からライセンスのオファーがあり、そのうちの一社に口説き落とされたそうです。その企業が頑張ってパブリッシングしてくれて、ベストタワーディフェンスゲーム賞を受賞したとのこと。中国では反日感情はあっても、日本製品に対する信頼性が高いので、積極的に出したほうがいいといいます。

◆アドネットワークの活用術

海外展開ということで、広告やメディアへの対応に関する質問もありました。竹内氏はプレスリースの配信サービスを使って、英語でリリースを配信しているとのこと。またイスラエルのサイトを経由してニュースサイトのPVを調査しており、時には広告出稿や有料レビューなどを依頼することもあるとしました。成澤氏はFacebook、Twitter、アドネットワークの併用がメインで、アプリ内広告を用いた自社ゲーム同士の宣伝も行っているそうです。

弘津氏も「うちは広告予算が事業計画の中になく、プロモーション費用はゼロです」と語りました。アメリカのサイトでレビュー記事のトライアルを行ったこともありましたが、その時になって「KPIを計測するツールがゲーム内に入っていないことに気がついた」ほど。プレスリリースの掲載一つとっても、日本と海外では勝手が違うため、手探り状態というのが正直なところだとしました。

特に盛り上がったのがアドネットワークの活用方法です。成沢氏はプロモーション担当が毎日データをチェックしながら、出稿先や表示バナーの微調整を行い、大きな変更については、一ヶ月単位でどの業者を使用するか選定しているそうです。もっとも「広告を出すとテンポが悪くなる」のも事実で、ゲーム内容やUIによって広告の種類や表示場所を調整しているとのこと。コンテンツ傾向によっても異なり、「じっくり遊んでもらいたいゲームでは、ストーリーが繋がっている場所には広告を出さずに、ゲームスタート冒頭だけにする」「カジュアルなゲームでは流入や手軽さを損なわないように、入り口では出さずにゲーム内のキリが良いタイミングでこまめに広告を出す」などの工夫を行っていると語りました。

竹内氏も「広告に関して批判をゼロにするのは不可能なので、広告の消し方をはじめ、いかにわかりやすくユーザーに伝えるか苦労している」と語りました。現在はインタースティシャル広告(全画面で表示させるポップアップ型の広告)を入れつつ、効果を検証している最中とのことです。またアドネットワークを増やし過ぎるとSDKがアプリ容量を圧迫するため、いろいろな業者を試しつつ、最終的にAdMobに落ち着いたとコメント。成澤氏も「容量の問題があるので一度に一つに絞っている」としつつ、選定には非常に時間をかけていると補足しました。

一方、弘津氏は出稿ではなく、広告を表示する側として実装しているとのこと。業者についても現在はAdMobとアイアドを実装しており、今後はユニティアドも入れる予定だと明かします。AdMobについてはアップルから「故スティーブ・ジョブズが最後に肝いりで作った施策だと言われて、その志にほだされて決めた」とのこと。昔は広告とゲームの内容がマッチせず、せっかく広告表示枠をとっても広告が表示されないことが多かったが、最近では広告の種類が広がり、表示率も上がっていると語りました。

◆海外の与信情報をどうやって確認するか?

質疑応答では情報収集についても議論されました。大信氏は海外の協業先を通して情報を得ることが多いと回答。弘津氏は海外で流行っているゲームを毎週一回、全社員でプレイする時間をとっており、日本語禁止のイングリッシュディナーも毎週実施していると答えました。成澤氏は社内で繁体字・簡体字・英語・韓国語を話せるスタッフが常駐しており、そのスタッフを通して生の情報を得ることもあるとコメント。社外のイベントや勉強会にも会社として積極的に参加するように促しているとされました。

竹内氏は統計データとトレンドで収集方法が異なるとして、前者であればジェトロ、後者ならDISTIMOApp Annieなどの調査会社を活用していると答えました。各国のニュースサイトをブラウザの翻訳サービスを使いながら巡回しているとも回答し、「海外サイトを見る習慣をつけることが大切」だといいます。他に与信情報では帝国データバンクで海外企業の登記簿の取り寄せや与信調査をしてくれるサービスがあり、よく活用しているとのこと。与信については客観情報をもとに判断することが大切だとしました。

筆者紹介/ 小野憲史 (ゲームジャーナリスト)
平日は主夫業に忙しいゲームジャーナリスト。 雑誌『ゲーム批評』編集長を経て2000年よりフリーランスで活動中。Webを中心に業界レポート、インタビュー、コラムなどを発表している。 2012年よりNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。

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