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ゲーム業界の若手クリエイターが振り返る「わたしの就職活動」セミナー

小野憲史(ゲームジャーナリスト) 2015-03-05

NPO法人IGDA日本Student-TFは学生向けセミナー「わたしの就職活動」を2月14日に都内で開催しました。会場にはゲーム業界をめざす約50名の学生が参加し、先輩達の体験談を興味深く聞き入っていました。講演者側では大手からスタートアップまで規模も職種も異なる6社6名が登壇。終了後に実施した交流会では、持参したポートフォリオやデモを講演者に見せてコメントをもらう姿も見られるなど、さまざまな交流がみられました。

Student-TFは学生とプロの交流の場を提供することなどを目的に、2014年に発足したIGDA日本のタスクフォース(TF)です。学生から「企業の若手社員から就職活動の体験談について聞きたい」というアイディアが寄せられたのを発端に、今回の開催にいたりました。Student-TFはFacebookのグループページ上で募集が行われており、趣旨に賛同する人ならプロ・学生を問わず、誰でも参加することが可能となっています。

尾形美幸氏

モデレータをつとめたStudent-TF世話人の尾形美幸氏は冒頭で「採用は結婚に似ている」と説明しました。採用担当者は末永く一緒に働ける人を「真剣に」探しています。これに対して「どんな企業でもいいから就職したい」というのは「誰でもいいから結婚したい」というのに等しいとのこと。もっとも、通常の就職活動では一人で複数社を受けるのが当然です。それだけに「なぜその会社を選んだのか」「どのようにして面接などに臨んだのか」といった話を聞くことは価値があると説明しました。

大手からスタートアップまでさまざまな職種が集結

セミナーで登壇したのは以下の6名です。

1) ジェムドロップ株式会社 岡村典明氏(プログラマー) 2015年入社予定

2) ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 安藤圭吾氏(エンジニア) 2014年入社

3) 株式会社フロム・ソフトウェア 祖父江 亮哉氏 (設計) 2014年入社

4) 株式会社ディー・エヌ・エー 藤沢 周之介氏 (プロデューサー) 2012年入社

5) 株式会社ヘキサドライブ 寺井 瑞希さん (プランナー) 2014年入社

6) 株式会社マトリックス 坂口 晶子さん (デザイナー)2010年入社

岡村典明氏

トップバッターをつとめたのは唯一の内定者である岡村氏(ジェムドロップ)です。大学を卒業後、ゲーム業界に進みたいが、武器(スキル)に乏しかったためゲーム専門学校に進学。説明会で知ったジェムドロップに絞り、専門学校で制作したゲームなどをプレゼンして内定を勝ち取りました。面接では「目標指向に基づいた行動」「自我が強い」「コミュニケーションが取れる」という長所もアピールしたといいます。

専門学校で作成したゲームは個人制作も含めて3本で、中にはプログラマーと言いつつ、エフェクトを担当したタイトルもあったそうです。この時もチームメンバーの構成などから、自発的にエフェクトを担当したいと切り出し、面接でもクオリティの高さを評価してもらえたので良かったとのこと。また大学生の時に書籍を元に自己分析を済ませていたため、自分の長所を意識しながら専門学校の授業に臨めたのが良かったと振り返りました。「ゲームの質が上がるし、自己分析した内容は自己PRにそのまま書くこともできます」。

安藤圭吾氏

続いて登壇した安藤圭吾氏(ユニティ)は、学生時代に先生からまだマイナーだったUnityについて紹介され、「今はじめればUnityのトップランナーになれる」という言葉に反応したといいます。その後、福岡で開催されているハッカソンイベント「八耐」に参加したり、地元の熊本でハッカソンを主催するなどして技術力を磨き、独自にUnityのゲーム投稿サイトを立ち上げて運営したりもしました。

就職活動では大学で履歴書の添削も受けましたが、文面が八方美人になり、自分を見失いかけたとのこと。これではダメだと思い直した安藤氏。ある面接で思いを正直に話した結果、「君はここにいるべきではない」と先方の経営者から激励され、名刺交換までして帰ったという武勇伝も披露されました。新卒でIT業界に就職しましたが、Unityの技術ブログで情報発信をしたり、コミュニティ活動を続けたりした結果、最終的に転職することに。「ゲームが好きというよりUnityを触っているのが好き」と語り、今後もUnityを通してゲーム業界に貢献したいと語りました。

祖父江 亮哉氏

続いて登壇したのはフロム・ソフトウェアで設計職にたずさわる祖父江氏です。設計とは同社特有のポジションで、プランナーとプログラマーをつなぐ役割のこと。プランナーが発想した企画要件に対して、最適なシステムを提案すると共に、仕様書や設計書を作成するのが主な仕事となります。「最近ではアーティストとプログラマーをつなぐポジションとしてテクニカルアーティストが確立されてきましたが、それの企画版という感じでしょうか」と説明されました。

大学院で電子情報工学を専攻し、国際学会での発表経験もあり、一時は研究職を志したこともあったといいます。しかし次第に「研究して論文を書く」ことに疑問を感じるようになり、努力が続かなくなってしまったとのこと。そんなときに浮かんできたのが、昔から好きだったゲームの世界でした。一般大手とゲーム業界に内定が決まり、周囲からは一般企業での就職を勧められたことも。しかし「自分が本当にやりたいことでなければ、絶対に努力が続かないことは、大学の研究生活で壁にぶつかった時から分かっていました」と語り、ゲーム業界を選んだと説明されました。

「100社受けた」「卒業1ヶ月前に内定」など多彩なエピソード

藤沢 周之介氏

若手ながらプロデューサーとして、すでに4本のゲーム制作に携わった藤沢周之介氏(ディー・エヌ・エー)。大学では工学部に在籍し、統計分析やビッグデータなどの研究をしていました。ゲームについても特に興味はなかったといいます。そんな藤沢氏の人生を変えたのがiPhoneの発売で、大学2年生の時でした。学生団体を立ち上げてスマホを使ったセミナーやイベントを企画・運営していたところ、大手企業から声がかかり、スマホゲーム開発のイベントに参加することになったのです。

ところが「初めてのゲーム開発だったため、右も左もわからず不本意な結果に終わってしまった」。リベンジしたいという思いからゲーム業界で就職活動をはじめたところ、同社の「学生のアイディアでも、熱意をもって論理的に質問してくる姿勢」に好感を持ったといいます。その後プロデューサーとして開発だけでなく宣伝についても力を入れていることや、寝る前に勉強も兼ねて必ず映画を一本みるために、仕事を早く片付けて帰宅するようにしていること、などが話されました。

寺井 瑞希さん

「これまでの人がすごすぎて若干ひいてしまっている人、私の体験談を聞いてなごんでください」と切り出したのは、プランナー職の寺井瑞希さん(ヘキサドライブ)です。大学ではカント哲学を学びつつ、プライベートではアルバイトにあけくれる日々。出版社希望でしたが会社説明会で疑問を持ち、さまざまな業界の説明会に足を運んだ結果、いちばんしっくりきたのがゲーム業界だったと振り返りました。

もっとも「ゲーム開発」については素人同然だった寺井さん。つてをたどって若手ゲームデザイナーを紹介してもらい、企業に提出する企画書などの添削もしてもらいました。他の業界とも並行して就職活動を進め、応募書類(履歴書など)を提出した数は約100社。もっとも書類選考でことごとく落ち、面接に進めたのはゲーム業界だけだったといいます。「最低限、各社のゲームは遊んでおく」をベースに、「会社ごとにコンセプトを決めて面接に臨みました」という寺井さん。他に「自分を売り込むという意識を持つ」「素直に話す」「事前に文章を用意しない」などのアドバイスを送っていました。

坂口 晶子さん

最後に登壇した坂口晶子さんは今回唯一のデザイナー職で、関西の美大出身です。学生時代をふりかえって「デッサン力はあるに越したことはない」「好きなことは、とことん好きになっておく」「ドローイングだけでなく、粘土造形やアパレルなど、さまざまな表現方法があることを知る」という3点について話しました。「自分の瞳をデッサンする」という課題に対して、「睫毛まで描いたのは自分だけだった」と語る坂口さん。ディズニーのCGアニメに登場するキャラクターが好きで、粘土造形なども行ったといいます。

もっとも就職活動は思い通りにいかず、内定が決まったのは4年生の2月のことでした。関西での就活で全滅し、関東にまで幅を広げたものの年内に決まらず、先の見えない焦りもあったといいます。決め手となったのは、実力もさることながら、同社が新卒といえども通年採用を行っていたから。内定が出なくても諦めずに応募し続けることが大切だと語りました。また登壇者の中で唯一の既婚者でもあり、産休制度などをはじめ長く働ける環境が整っているかも、会社選びで重要だとしました。

取材時のやりとりを直接、紹介したかった

第二部では尾形氏の司会でパネルディスカッションが行われました。「事前にトピック案も用意してきた」という尾形氏でしたが、会場からは次々に質問が飛びだし、そうした準備をふいにしかねない勢いだったほど。「家庭用ゲーム中心の企業とソーシャルゲーム中心の企業で、就職活動に何か違いはありますか?」「趣味を仕事にしたことで何か変わったことはありますか?」などの質問があり、和気あいあいとしたディスカッションが繰り広げられました。

セミナーの最後には尾形氏から総括が行われました。「若手とはいえ、みなプレゼンが非常にうまく驚いた」と語る尾形氏。これまでも取材を通して若手クリエイターの話を聞く機会が多かったが、講演という形式をとったことで、短時間で密度の濃い話が聞けたのではないかといいます。また企画にあたって「取材でのやりとりを直接、学生に紹介できたら良い勉強になるのではないか」という問題意識もあったと明かされました。最後にStudent-TFに対して何か要望があれば、ぜひ教えて欲しいと話され、幕引きとなりました。

以上

筆者紹介/ 小野憲史 (ゲームジャーナリスト)
平日は主夫業に忙しいゲームジャーナリスト。 雑誌『ゲーム批評』編集長を経て2000年よりフリーランスで活動中。Webを中心に業界レポート、インタビュー、コラムなどを発表している。 2012年よりNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。

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