- インタビュー

先日、知り合いの韓国人記者が来日した際に、アメリカのプロゲーミングチームEvil Geniuses(以下EG)所属として活動中の格闘ゲーム女性プロゲーマー草地裕子(以下チョコ)選手にインタビューをしたいので通訳してくれないかと頼まれました。彼女とは以前から知り合いで、同じ女性として個人的に応援している選手でもあります。このチャンスを生かして色々とお話を聞いてきましたので、以下からお楽しみください。
普通の女の子が突然プロゲーマーの道へ
――まず、プロゲーマーになったきっかけから教えてください。
EGのオーナーの方から、フェイスブックで直接メッセージをもらいました。5年ほど前に私が日本のゲームセンターの小さな大会でマゴ選手をたまたま倒したんですが、その動画がアメリカで話題になって「この女の子は誰だ」という感じで興味を持ってくださったようです。
――ストリートファイターを始めたのはいつですか。
大学3年生のときなので、2008年だと思います。ストリートファイター4が出た年ですね。そのころゲームが好きすぎて、ゲームセンターでバイトを始めたんです。仕事が終わったあとそこでゲームをしていて、大会を運営したりもしていました。
そこでももちと知り合って付き合うようになったんですけど、そのころちょうどウメハラ選手がプロになり、それを見てももちをプロゲーマーにしたいと思って手伝っていたんです。そのときは、まさか自分がプロゲーマーになるとは思ってもいませんでしたね。現在同じチームで一緒にプロゲーマーをやらせてもらっていますが、それは本当に嬉しいです。それにカップルプロゲーマーが格闘ゲーム界には全然いないので、面白いかなと思っています。
――日本でプロゲーマーという職業につくことに対して不安はありませんでしたか。
そのころ普通に仕事もしていたんですがゲームが好きすぎて辞めちゃったぐらいなので、好きなことを仕事にできるというのは嬉しかったですね。一方で、日本ではプロゲーマーというのはまだまだ道がないので不安もありました。
――「チョコブランカ」という名前の由来を聞かせてください。
飼っていたうさぎの名前が「チョコ」だったんですが、死んでしまって落ち込んでいたところ、友達から気分転換に遊びに行こうよと誘われてゲームセンターに行ったんです。その日にストリートファイター4を始めたので名前を「チョコ」にしました。日本では「チョコ」として活動していたんですが、ブランカ使いということでアメリカで「チョコブランカ」とくっつけて呼ばれるようになりました。
――なぜブランカを使うようになったんですか。
最初、実はリュウを使っていました。ところがストリートファイター4が初めてやった格闘ゲームだったので、昇竜拳や波動拳といったコマンドは難しくて出せなかったんです。そこで、ブランカならコマンドが簡単なキャラクターだから使いやすいよと勧められて、そこからずっとブランカを使っています。
ゲームを愛し続けてきた道のりのなかで
――今までで一番記憶に残っているご自身の大会は。
自分のですか。うーん、そうですね。『GODSGARDEN』のレディース大会で初めて優勝して、賞品としてコントローラーをもらったときですかね。女性プレイヤー自体が少なかったので小さな大会だったんですけど、それが嬉しかったので一番記憶に残っています。プロになる前の話ですね。
――自分のプレイの強みは何ですか。
女性ならではの度胸や、技を放つタイミングだと思います。そういうので大物食いをしたりすることがたまにありますね。男性の方も私に負けたらまずいというプレッシャーを感じて動きがちょっと悪くなっているところを、私がメチャクチャやって荒らすみたいな感じですね(笑)。男性だとリスクリターンを考えて慎重になる人が多いですが、私は荒らすところが自分の良さかなと思っています。
――海外大会の雰囲気はいかがですか。
たとえばアメリカの大会だと、何千人という参加者が世界から集まって来るんです。格闘ゲームを通じて世界中に友達ができたことが、本当に興味深いなと思います。オンラインゲームに比べるとまだまだ規模は小さいんですけど、とても大きなラスベガスのホテルを貸し切って大会をやっていて、日本ではあり得ないことなのでそれがすごいなと思います。そこで活躍できたらいいなという思いでみんな頑張ってますね。私はまだそこまで実力的には届かないんですけど、いつかそこで優勝したいです。
――EGでは自分のイメージブランドを高めなければならないという特徴があると聞いていますが、そのあたりは認識されていますか。
日本ではプロ市場がまったくないので他の国とは事情が多少異なりますが、ネット番組に出てタレントのような活動をしたりするという面で、ただゲームを練習しているだけでいいというわけではないので、トークスキルを高めたり自分の行動に気を配ったりはしています。ただし、チームからそういうことを言われたことはないですね。
唯一の女性プロゲーマーとして目指す道
――日本初の女性プロゲーマーということに関してどのように感じていますか。
日本で初めてということに関してはもちろん光栄に思っています。男性のプロゲーマーはいますが女性はひとりなので、逆に私にしかできないことが何かあるのではないかという思いは常にあって、楽しみでもありプレッシャーでもありますが、やりがいも感じています。
――女性にもっと格闘ゲームを楽しんでもらいたいという気持ちもありますか。
そういう気持ちは強いです。ゲームセンターに彼氏と一緒に来ててつまらなそうにしている女性が多いので、それだったらちょっと一緒にできたら面白いんじゃないかなという感じで、そういう女性を増やせたらいいなとは思っています。男性も、ゲームに理解のある彼女がほしいと言う人が多いですからね(笑)。そういうところに私がアプローチできたらいいなと思います。
もちろん最近はゲーム観戦を楽しむということも大事だなと思っていて、動画は見るけど自分はプレイしないというファンの方が男女問わず増えているんです。そういう人たちからも支持してもらいたいですし、やはり同じ女性に支持してもらえると嬉しいですね。
――今後どんな選手になっていきたいですか。
日本でプロゲーマーという職業があるということを一般の人たちに知ってもらいたいですね。そして「ゲームのお姉さん」のような感じで、小さな子供たちや今の若い人たちにも知ってもらって支持してもらえたらと思います。もちろん自分自身ももっと強くなりたいですし、強さと人気を兼ね備えた選手になりたいですね。
――具体的な大会の予定などがあれば教えてください。
まだ確定ではないですが、5月にアメリカで行われる『SoCal Regionals 2015(SoCal)』に出るかもしれません。あとは『Evolution Championship Series 2015(EVO)』は必ず行きますので応援してもらえたら嬉しいです。それと最近YouTubeチャンネルを頑張ってやっています。格闘ゲームの講座で技のテクニックなどを解説している動画で、喋りは日本語ですが英語字幕が出ていますので、日本の方はもちろん海外の方にも是非見てもらいたいですね。
みなさん、いかがでしたか。予想以上にたくさんのお話を聞くことができ、このようなロングインタビューが実現しました。終始落ち着いて丁寧に答えていく様子を見て、私はこれまで何度も取材してきた海外プロゲーマーと同じ雰囲気を彼女に感じました。それだけプロ意識が強いということの表れではないでしょうか。今回、同じ女性としてチョコ選手を応援していきたいという気持ちでいっぱいになりましたが、このインタビューを通じて、私と同じように感じてくれる女性がたくさん現れることを願っています。(写真:キムヨンウ記者提供)
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