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AAAタイトルそしてVRへと広がるゲームオーディオ最前線〜GDC2015オーディオ報告会

高松拳人(フリーランス) 2015-04-21

NPO法人IGDA日本SIG-AudioGDC2015オーディオ報告会を4月17日、DeNAカフェラウンジで開催しました。当日はゲームオーディオ関係者を中心に約60名が参加し、スクウェア・エニックスの西松優一氏、ヴァルハラゲームスタジオの稲森崇史氏、バンダイナムコスタジオの中西哲一氏による報告に聞き入っていました。
すでに講演資料がウェブにあがっていますので、あわせてご覧ください。

西松 優一 氏(株式会社スクウェア・エニックス)

・管弦楽の語法を最大限に利用したインタラクティブミュージックを制作するには
はじめにオーケストラの収録から再考した、インタラクティブミュージックの制作に関する講演の報告がありました。
オーケストラ楽曲を弦や金管などといった楽器の種族ごとに分ける一般的なミキシングのアプローチでは管弦楽法に則った音色の変化などが難しいことがわかり、楽曲をメロディ、リズム、伴奏に分けて収録したそうです。

その際、「メロディの部分だけ弾いて」などという指示では奏者が混乱しやすいので、譜面を役割ごとに色分けして印刷することで収録を効率化することに成功したそうです。さらに、役割に加えてフレーズで分割して収録が行われ、それを自由に遷移できるようにしたとのことですが、残念ながらゲーム上での使用例や効果については講演では触れられなかったそうです。

・実験的手法のプロトタイプ制作及び実用化について
Kinectを用いたリズムゲーム『ディズニーファンタジア:音楽の魔法』に関する講演もありました。
本作ではMax/MSP・Abelton Live・Kinectなどを組み合わせて、プロトタイプが制作されたそうです。実際に採用されたものの中には、特定の座標やその組み合わせに合わせてクオンタイズ(データのタイミングを補正)した音を出力する「なんとなく操作してもそれっぽくなるシステム」や、ハ長調のMIDIデータを使用して、コードにあわせて特定のスケールに移調するシステムなどがあります。

楽器や玩具に対する音楽的ゲームの位置付けについての議論もありました。たとえばドラムを叩くという動作について、実際の楽器では叩けば直ぐに鳴りますが、Kinectを用いるとそれだけで100ms程度のレイテンシーが発生するため、ドラムを叩くようなアクションは没になったそうです。
またピアノの場合は88個もの鍵盤に加えて、無限のベロシティ(音の強弱)があり、そのままではゲームとして複雑になりすぎるとのこと。
その後、「最小限の入力で多彩な音楽的表現を行うことができるゲーム」の開発を念頭に置き制作されたものが『ディズニーファンタジア:音楽の魔法』だと解説されました。

・GDC初登壇感想
自身も「JRPGにおける音声文化の発展」というセッションで、GDCに初登壇した西松氏。講演後、受講者とのディスカッションを通して、海外のデザイナーはとても貪欲に他文化を吸収しようとしていると感じたそうです。
西松氏は世界中のサウンドプログラムに対する熱意を集めて仕事に活かしたいと締めくくりました。

稲森 崇史氏(株式会社ヴァルハラゲームスタジオ)

・『Sunset Overdrive』のサウンドデザインについて
本作はMicrosoftとインソムニアックゲームスが共同開発したXbox One向けのアクションゲームです。このサウンドデザインについて報告されました。
稲森氏はこの講演で「クリエイティブプロセスの重要性」を感じたそうです。
大人数のオーディオチームでの開発では意識共有が欠かせず、『Sunset Overdrive』の開発フローでもはじめにオーディオピラー(オーディオが満たすべき要件)やコンセプトオーディオなどの作成が行われています。

・ゲームの状況にあわせた音の変化について
コンボ攻撃によって主人公のスタイルメーターがレベルアップすると、効果音がリアル系からシネマ系、レトロ系へと変化していったり、BGMのトラック数が増えていったりします。トラックが加わるのもレベルが変わった直後ではなく、曲のちょうどよいところで切り替わるように調整されています。他にコスチュームに合わせて衣擦れや足音なども変わります。
これらはMicrosoftのオーディオチームが持ち込んだシステムだと明かされました。稲森氏は「経験豊かなパブリッシャーチームのサポートがゲームオーディオ文化の成熟を後押ししている」と考察しました。

・Umbra利用の遮蔽・伝達 について
シューターアクションゲーム『Quantum Break』では、オクルージョンカリングに特化したミドルウェア「Umbra」を利用してオーディオ処理が行われているそうです。
本作では音源とカメラ間で3x3のレイキャストを行い、遠距離の場合は1本だけですませています。 Umbraを使用したことで、すべての3Dオーディオ計算が2ms以下で済んだなど、レイキャストを非常に高速にすませられました。UmbraとWwiseのインテグレーションも進行中です。
稲森氏は「処理負荷やデータ作成など、手間がかかる遮蔽・伝達経路処理を今後、手軽に扱える時代が来るかもしれません」と語りました。

・モジュール化とデータ継承を用いたスマートサウンドデザインについて
EA DICEの内製ゲームエンジン「Frostbite」では、最終的に必要になる音を要素分解してパラメータを反映させながらリアルタイムに鳴らしているそうです。
分解した音を絵の具のように混ぜ合わせて一つの音にするというアプローチをとっています。多くの音でサウンド素材を共有できるので省メモリ化が可能になります。
ただし、ノウハウの蓄積がなければ使いこなすことが難しいという側面もあります。

・GDC初参加感想
稲森氏は「初参加のGDCでしたが、とても居心地がよかったです」とふりかえります。
CEDECとの比較も行われました。稲森氏は「(オーディオセッションにおいて)CEDECではディベロッパーごとに独自の考えや工夫が紹介されることが多いが、他社が手軽にまねできないものも多い。GCDでは新しい技術やチャレンジは少ないが、普遍的な情報がオープンにされる」といいます。
その上で、どちらにもアンテナを張っておくべきだと締めくくりました。

中西 哲一 氏(株式会社バンダイナムコスタジオ)

・AudioBootCampについて
AudioBootCampはGDCの中でもオーディオ関連の情報について広く浅く学べる一連のセッション群で、朝から晩までオーディオ漬けとなります。ここでは近年注目されているテクニカルサウンドデザイナー(TSD)という役職が紹介されました。TSDはサウンドデザイナーとプログラマーの橋渡しの役割を担っている人たちのことです。

ゲームサウンドの実装には様々な専門知識が必要で、インタラクティブなロジックの組み立てや、膨大なデータを効率的に取り扱うワークフローを構築するTSDの重要性が増しています。
TSDになるには、様々なゲームエンジンやミドルウェアを扱えて、プログラムも書けるようになること。そして、たくさんのゲームで遊ぶことが大切だと言います。
また、どこに行ってもWwiseの話だらけで、Wwiseで会話をしている感じだったそうです。「欧米圏ではサウンドにおいても、ミドルウェアを使うのは当たり前だと感じた」と語りました。

・VRAudioについて
VRAudio表現のコツとして、音源をステレオではなくモノラルにすることや、どこに音源を置くか、そして大前提として「音を鳴らしすぎない」ことが重要だと話されました。
またOculus VRからGDCにあわせて公開された3DAudioSDKについても報告がありました。WwiseやVST(Visutal Studio Technology)向けのプラグインも用意されており、Oculus以外にも使えるということなので、VRAudioの制作時に強い味方になりそうです。

今回の報告会を受けて、ワールドワイドでインタラクティブミュージックへの挑戦が活発であるという印象を受けました。
状況に応じて楽曲を組み替えたり、効果音に変化が見られたりとサウンド表現は増々豊かになってきています。
また、一つの音を鳴らすだけでも様々なアプローチ方法があるということが分かり、ゲームサウンドの世界の奥深さを感じました。

会場の様子
筆者紹介/ 高松拳人 (フリーランス)
根っからの創作活動好きなフリーランス。主にノベルゲームのスクリプトやweb媒体での記事執筆活動を生業としている。作りたいものを作るために同人活動を積極的に行っており、様々な作品を公開している。

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