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「人工知能のための哲学塾」開講

尾形美幸(ボーンデジタル) 2015-06-01

NPO法人 国際ゲーム開発者協会日本 ゲームAI専門部会(IGDA日本 SIG-AI)は、 「人工知能のための哲学塾 第零夜」を2015年5月28日に開催しました。会場となった株式会社Donuts コラボレーションルーム(新宿区)には約40名の参加者が集まり、ゲーム・哲学・人工知能(以下、AI)について、活発な発表と議論が行われました。本記事では、その模様をご紹介します。

なお本セミナーの資料はこちらに開示されています。

哲学塾は全六回の予定で、今後も順次実施

三宅陽一郎氏

この塾の発起人で、SIG-AI世話人の三宅陽一郎氏は、デジタルゲームにおけるAI技術の理論的確立と、ゲームタイトルへの実装業務に長年従事しています。塾の冒頭、三宅氏は発起までのいきさつを次のように語りました。「私はこれまで、科学や工学の側面からゲームAIを研究し、各所で発表してきました。しかしAIは哲学とも密接に関わりをもつ学問です。そこでゲームAIをつくる中で必要とされる哲学を、ゲームとつなげて解説する“哲学塾”をやってみたいとFacebookに投稿しました。今後ゲームのキャラクターAIは技術的進化と共に、生物と同じように主観的な世界観を持ち始めるでしょう。“どうすれば、いつから、AIは主観的世界を持ち始めるか?”というのが、哲学塾全体を貫くテーマです」。この提案に対し、短期間で数百人の賛同者が集まり、Facebook上にコミュニティページが起ち上げられました。そして、哲学塾の概観を紹介する第零夜の実施にいたったのです。この哲学塾は全六回の予定で、今後も以下の内容で順次実施される予定です。なお、この塾は隔月ペースで開催される予定で、連続受講も可能ですし、一夜だけの受講も可能です。

第零夜 哲学から人工知能とゲームを捉える(今回)
第一夜 フッサールの現象学
第二夜 ユクスキュルと環世界
第三夜 デカルトと機械論
第四夜 デリダ、差延、感覚
第五夜 メルロ=ポンティと知覚論

皆さんが興味をもった事柄を調べ、次回以降で発表してほしい

第零夜は全三部構成で、第一部では三宅氏が、前述の第一夜~第五夜を概観するための知識と参考文献を紹介しました。三宅氏の話は全七章に分かれており、第一章のテーマは「人工知能とは何か?」でした。人間の精神は外部からの情報を受けると、まずは“無意識の層”で言語化し、言語によって世界を分節化し、“意識の層”で意思を形成し、その意思を身体へ伝え、何らかの運動を起こします。この“無意識の層”と“意識の層”を合わせたものが知能です。しかし伝統的なAI研究は“意識の層”に集中していました。“無意識の層”のAI、つまり生態学的人工知能(後述)をつくることは難しいと三宅氏は語りました。

第二章のテーマは「機械論的人工知能」で、ここではゲームAIの伝統的な型であるインフォメーション・フロー(情報の流れ)が紹介されました。伝統的なAIは、情報がINPUTされると、反射的にOUTPUT(行動)します。このとき抽象的な思考や理論的な考えが生まれ、INPUTとOUTPUTの間に遅延が起こり得るのが生物です。INPUTに対する反応を意識的に遅延させることで、知性の生じるチャンスが生まれると三宅氏は解説しました。

第三章のテーマは「意識モデル」で、ここではA-Consciousness(精神活動に対する意識)に関する3つのアイデアとして、(1)黒板モデル(Blackboard Architecture)、(2)GWT(Global Wrokspace Theory)、(3)MDM(Multiple Draft Model)が紹介されました。生物の脳は身体と共にあり、身体は環境と共にあります。そして環境に住み着くことで、知能は制限を受けます。AIが主観的世界を持つためには、生物のように身体を持ち、制限を梃子にする必要があるのです。

第四章のテーマは「生態学的人工知能」でした。生態学的人工知能とは、環境や身体との関わりを通してAIを捉える考え方です。これには前述の“無意識の層”の実現が不可欠です。生物は感覚器と運動器を使って環境を認識します。感覚器によって捉えられる世界が知覚空間、運動によって捉えられる世界が作用空間で、両者を合わせて環世界(Environment World)とよびます。つまり、生態学的人工知能をつくるためには、AIにも環世界を与え、それを通してゲーム空間内のオブジェクトを認識させる必要があるのです。

第五章のテーマは「生物の主観を構築する」でした。AIに環境世界を与えることを知識表現(Knowledge Representation)といいます。AIは知識表現を通して世界(ゲーム空間)を理解し、それがAIの主観を決定します。ここでは、既存ゲームにおける、いろいろな知識表現の方法が紹介されました。

第六章のテーマは「身体の問題」、第七章のテーマは「経験の問題」でした。ここでは身体を通した経験によって世界を認識する哲学である現象学が紹介されました。三宅氏は、「現象学的AIをつくるとしたら、環世界がヒントになるでしょう」と語りました。さらに三宅氏は、「今夜私が語った内容を足場にして、皆さんが興味をもった事柄を調べ、次回以降で発表してほしいと思っています。次回以降は、ライトニングトークの時間を設けます」と続け、話を締めくくりました。

三宅氏の話を受け、第二部ではeスポーツプロデューサーの犬飼博士氏が、「スポーツとテクノロジー」というテーマで実際にライトニングトークを実施してみせました。さらに第三部では、参加者が8つのグループに分かれ、「人工知能とは何か?」「現象学的人工知能は可能か?」「人工知能はどこまで生き物に近くなれるか?」などのテーマでディスカッションを実施しました。

犬飼博士氏(右)

「AIは、科学・工学・哲学が相互に刺激し合って発展する学問です」という三宅氏の言葉を裏付けるように、今回の塾には、ゲーム開発者のみならず、様々な専門分野を持つ人々が参加しました。ゲームに加え、家電製品やロボットなど、AIの活用範囲は年々拡大しています。それに比例して、AIに対する関心が高まっているからこそ、この哲学塾は多くの人を惹きつけているのでしょう。今後も継続する哲学塾で、さらに活発な意見交換が実施され、日本のゲームAI研究がさらに活性化することを期待したいと思います。

筆者紹介/ 尾形美幸 (ボーンデジタル)
株式会社ボーンデジタル所属。NPO法人 国際ゲーム開発者協会日本 理事。CG分野の書籍制作、雑誌&Webサイト記事執筆、講師などを生業とする。東京芸術大学大学院修了、博士(美術)。公益財団法人 CG-ARTS協会にて教材の企画制作等に従事した後、フリーランスの編集者・ライターを経て現職。共著書に『改訂新版 ディジタル映像編集』(2015/CG-ARTS協会)、著書に『CG&ゲームを仕事にする。』(2013)、『ポートフォリオ見本帳』(2011/ともにエムディエヌコーポレーション)などがある。
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