• インタビュー

4年目を迎えたGCS、そのポイントを実行委員に聞く

小野憲史(ゲームジャーナリスト) 2015-06-05

ゲーム開発者コミュニティの合同文化祭「ゲームコミュニティサミット(GCS)2015」。今年も7月11日(土)に恵比寿で開催されます。すでに参加コミュニティやセッション情報も出そろい、いよいよ開催が近づいてきました。今年のテーマ「凝縮」にかける思いや、実行委員会が推す注目セッション、昨今の勉強会事情などをテーマに座談会を行いました。

GCS2015公式サイト http://gamecomsummit.wix.com/2015

ーーーかんたんに自己紹介をお願いします。

佐々木:GCS実行委員長の佐々木瞬です。GamePMという開発者コミュニティを主催していて、GCSでもセッション参加をします。

佐々木瞬

上原:ゲーム業界コミュニティという、ゲーム開発者同士の横のつながりを深めることを目的とした会を主催している上原倫利です。ふだんはボードゲーム大会をやったり、プランナー向けの勉強会をしたりしています。

上原倫利

長久:NADECの長久勝です。NADEC自体はすでに終了したコミュニティですが、GCSでは他にもいろいろと考えています。プライベートでも、しばらくゲーム関係の仕事から離れていたのですが、この4月から再びサーバサイドのエンジニアとして業界に戻ってきました。

長久勝

粉川:ゲーム開発環境勉強会の粉川貴至です。この勉強会はFacebookグループの方が盛り上がっていて、もうすぐ登録者数が800人になります。

粉川貴至

ーーーありがとうございます。自分はIGDA日本の小野憲史です。座談会の司会をやらせていただきます。さっそくですが、今年のGCSはテーマが「凝縮」となりました。その意味するものは何でしょうか?

GCS2014 会場の様子

佐々木:GCSも今年で4回目となり、去年までは拡大路線できたのですが、改めて原点回帰したかったというか。たくさんのコミュニティに参加してもらうよりも、今年は個々のコミュニティを「濃くする」ことをテーマに開催することになりました。

ーーーあんまり聞いたことがないテーマだったので、戸惑っている人も多いのではないでしょうか。

佐々木:うーん、そうかもしれませんね。実際、去年までのGCSは「小さいセッションがたくさん並列で開催される」点が特徴でした。それを、もう少しまとめてみたという感じです。会場都合もあるんですが、最近の勉強会ブームに対する問題意識もあって、このような形になりました。まあ、懇親会で共通の話題が増えて、それはそれで盛り上がるのではないかなと。

ーーーなるほど、そのあたりの問題意識については、後で詳しく伺っていきます。一方で今年は新しく「ワークショップ横丁」というコーナーもできましたね。

長久:去年のGCSでは自分の方でデモ展示を開催して、かなり手応えを感じたので、何かそれに類することを今年もやりたかったんですよ。もっともデモ展示だと、ちょっと負荷が重たくなるので、いろんなコミュニティが集まって、自分たちのネタを手軽に披露できるような場があればいいんじゃないかなと考えました。ワークショップというと、半日かけてガッツリ参加するようなイメージがあるかもしれませんが、今回は10分〜15分で終わるような気軽なものが中心なので、いろいろ「つまみ食い」してもらえればいいかなと。

ーーー非常にライトな感じなんですね。

長久:そうですね。実際に体験して手を動かしてもらった方が、時間が短くても心に残ると思うんですよ。それこそ縁日感覚で楽しんでもらえれば良いかなと。ただし、今年はラウンドテーブルもこのコーナーに入っており、こちらの方はしっかり時間をとって議論してもらう感じになると思います。

上原:ゲーム業界コミュニティでも、講演セッションに加えてワークショップ横丁に参加する予定です。ボードゲーム会を開催しようかなと思っています。ボードゲームといえば、1プレイ60~90分といったイメージがあると思うのですが、会場では10〜15分で終わるものや、大勢で一度に遊べるようなものを揃えるつもりです。こういったゲームをとおして、初対面の人でも話しかけるきっかけにしてもらえればいいですね。

実行委員が所属するコミュニティではこんな企画が!

ーーー話が前後しましたが、みなさん講演では何をされるのですか?

上原:企画に関する講演をお願いしています。自分もプランナーですが、会社によって企画とかプランナーとかゲームデザイナーとか呼称がまちまちで、仕事の内容も違うし、なかなか定義しづらいところがありますよね。もともとゲーム業界コミュニティも、こういった現状を整理したくて始まった経緯があります。勉強会というとエンジニア向けのイメージがあると思うので、ぜひそれ以外の方にも参加して欲しいですね。

ーーーGmaePMは何を行われるのですか?

佐々木:これまでGamePMはアジャイル開発に焦点を当てていましたが、今は業界的に大きな波が落ち着いたところがあると思うんですよ。それで昨年のGCSでは粉川さんと2人で、「アジャイルとは何だったのか」という振り返りセッションをやりました。今年はアジャイルから飛び出て、開発環境やスタジオマネジメントなどに焦点を当てるつもりです。環境系のツール選びなども話したいと思っています。

ーーー佐々木さん自身が起業されたという点も大きそうですね。

佐々木:ああ、そうかもしれませんね。メールやチャットツールで何を使うかとか、実際の体験談もまじえて講演してもらう予定です。また最近はバージョン管理ソフトのジェンキンスの結果を、社内チャットツールのSlackで自動的に共有するなど、複数ツールでのコラボレーションが普通に行われていますよね。講演でもどういうツールを組み合わせると効率的か、などの話もする予定です。

ーーーNADECはいかがですか?

長久:去年の担当セッションがワークショップだったんですが、準備不足でうまくできなかったんですよ。その反省もあって、今年はマジメに準備しています。「みんなで簡単にゲームを作る方法」を考えるワークショップをやるつもりです。

ーーーそこ、もう少し詳しくお願いします!

長久:たとえばGoogle docsを使うと、複数人で文書を共同編集して、会議しながらみんなで議事録を作成できたりするじゃないですか。あんなイメージです。協働のプロセスとして、Gitのプルリクとか有名ですが、自分の中ではプルリクはもう古いと思っていてたりします。「次世代」を感じたい人は来てください。

ーーーゲーム開発環境勉強会は・・・

粉川:ネタを仕込んでいたら、あっという間にセッションが埋まってしまいました。でも、何か懇親会方面でサプライズがあるかもしれませんよ!?

ーーーそれは楽しみですね。IGDA日本でもフランスのVR事情や、地方のゲーム開発者がリモートワークで働くための秘訣、それからプロと学生がガチでトークするラウンドテーブルなどを企画していますので、ぜひ皆さん楽しみにしてください。

GCS2014 会場の様子

勉強会ブームの広がりと問題意識

ーーーさて、GCSがスタートして3年が経過したわけですが、この間のゲーム開発者コミュニティの変化について、どのように捉えていますか?

佐々木:裾野が広がって、コミュニティの数が増えましたよね。その一方で昔からやっているところでは、コミュニティとしての活動が終了というところもあるように思います。まあ、皆さんテーマをもってコミュニティ活動をされていると思うので、状況にあわせて流行り廃りもあるでしょうし、健全な流れではないでしょうか。GCSがきっかけで新しく生まれたコミュニティもありますし、良い流れは続いていると思います。なによりコミュニティに参加する障壁がぐっと下がったのは良いことですね。

長久:裾野が広がった一つの要因として、企業発信の勉強会も増えたのが大きいと思うんですよ。もともとコミュニティ活動は個人ベースで始まりましたが、今は企業が主催して大規模にやるようになった。当然僕らは産業としてのゲームを作っているわけで、そうした流れは普通だと思うんだけど、企業の思惑も絡んでくるので、それによって個々の勉強会が分断され始めている感じも否めない。やっぱりみんな、自社のために開催するわけだし、リクルーティングの要素も否めないですよね。草の根的なものとは立ち位置が変わってくる。

上原:たしかに参加者の動向が変わってきている感じはあります。ゲーム業界コミュニティでも、最初はコンシューマ系のプログラマーやゲームデザイナーの参加が大半だったんですよ。でも最近はメディアやソーシャルゲームの広報の人が普通に参加してくれています。参加のきっかけも最初は口コミだったのが、最近ではゲーム産業イベントカレンダーや、Twitterのツイートで知ったという人が増えてきました。まとめると「一見さんが増えた」という感じです。

ーーーそれはそれで良いのでは?

上原:そうなんですが、そういう人たちって勉強会といえば企業主体のものだと思っていて、昔からやられていたような、草の根的な勉強会のことを知らなかったりするんですよね。コミュニティ活動がカジュアルになって、参加者層が広がったのは良いんだけれど、昔からやっていたようなコアな人たちは、どこにいったんだっけという。

粉川:それは自分も感じますね。昔はC++などプログラミング技術そのものに焦点が当たっていて、レベルの高い勉強会が開催されていました。でも今は初心者向けのセミナーが増えて、ツールやゲームエンジンの使い方ばかりやっている感じでしょうか。

佐々木:昔はコミュニティが少なかったから、勉強会に参加すること自体が貴重でしたよね。GamePMに参加する人も、内容もさることながら、コミュニティ自体に価値を感じてくれていたように思います。でも最近はちょっと違ってきたかな。実際、いろんなコミュニティで同じヒトに会うことが多いんですよ。

長久:総じて「広く薄く」という傾向は、ゲーム業界だけじゃなくて、IT系の勉強会全体について言えるよね。でも、それって善し悪しで。最近は100人以上の参加者が集まるようなものも多いけど、正直そういったところには自分自身、もう行かなくなったんですよ。というのも、そういった大型の勉強会だと、お客さん気分で参加する人が大半で、おもしろい人に会えなくて。むしろ20〜50人くらいの勉強会の方が、尖った人に会える率が高い。

ーーーなるほど。

長久:実際、自分でもたまに10人くらいの小規模な勉強会を主催したりするけど、そっちの方がおもしろい人に会えることが多いしね。昔はおもしろい人に会いたければ勉強会に参加するのが良かったけど、今は違ってきたなあと。それもあって「凝縮」というのは、最近自分の中でもテーマだったりします。

ーーー粉川さんの場合、Facebookのグループページを管理するモチベーションは何だったりしますか?

粉川:自分がやっているような開発環境構築って、仕事自体がまだレアで、社内でもそんなにいないんですよ。ちょっと前のテクニカルアーティストみたいなもので、ポジションとして確立していなくて、ベテランのプログラマーが兼任でやっている例が多い。だったらオンラインで業界全体でつながる方が良いんじゃないかなと思ってやっています。

長久:昔のアニメ雑誌の文通コーナーみたいなモンかな。

粉川:そうかもしれません(笑)

上原:でも、同好の士を見つけたいというのは自分も同じですね。自分自身プランナーの話をもっと聞きたいんですが、誰もやってくれないので主催したわけで。同じようにCEDECでプランナー向けの非公式な飲み会を3年前から主催してるんですよ。過去2年だと学生が半分くらいいましたが、去年は業界人がぐっと増えました。ゲーム業界コミュニティも、その延長線上でやっています。セミナーでもボードゲームでも形は何でもよくて、同好の士を集めるのが大きな目的になっていますね。

佐々木:自分がその分野に興味があり、体験や情報をシェアしたいというのが基本じゃないでしょうか。ただ、同じテーマでずっとやっていくと、コミュニティもだんだん煮詰まっていきます。だからこそ今回のセッションも今までとは違うテーマを用意しました。実は最近アンリアルエンジンのコミュニティもやっているんですよ。これは黎明期のような濃い勉強会になっていて、参加していても楽しいですよ。この前はアンリアルエンジンの背景専門の勉強会をやったんですが、30−40人くらい集まって、かなり濃い内容になりました。

このセッションは外せない! 個人的な思いでプッシュ

ーーー参加者視点でみた時、おすすめのセッションはありますか? もちろん、全部のセッションがオススメだとは思いますが、あえて何かを推すとしたら・・・。

長久:伝説の「IMAGIRE DAY」の復活でしょう。2006年〜2009年ごろ、3DCGで定評のあるセッションがCEDECで毎年開催されていて、その中心人物の名前(今給黎(いまぎれ)隆)をとって、そんなふうに呼ばれていたんです。それが今回ワークショップで復活します。もっともテーマ自体は3DCGではなくて、目標設定の話になります。

ーーーテーマの変遷ぶりも興味深いですね。

長久:そうですね。さらに言うと、CEDECの立ち上げに大きな影響を与えた清水亮さん(現ユビキタスエンターテインメント社長)主催の「3D野郎大会」というイベントが、1998年ごろに行われていたんですが、今給黎さんは一参加者として見に行ってたらしいんです。それが後にCEDECでIMAGIRE DAYが開催されるようになって、今またGCSで復活という流れを振り返ると、ゲーム業界の勉強会の歴史という意味でも興味深いですよね。

ーーーなるほど。

長久:他に「POStudy ~プロダクトオーナーシップ勉強会~」も注目してほしいですね。Projectをマネジメントするだけではもう古い、参加者全員にプロダクトのオーナーシップ、すなわち当事者意識を持ってもらうことを趣旨とした勉強会です。自分が参加したときは、朝から夜まで10時間くらいワークショップを体験しました。GCSでは、その片鱗が短時間で体験できるので、オススメです。

佐々木:自分は「ゲームサーバ勉強会」ですね。個人的に興味がありますし、今の時流にあっているので、身になることが多いセッションになると思います。また、このコミュニティは2014年に発足したばかりで、1回目のGCSでは、まだなかったんですよ。まさに勉強会の広がりと共に生まれてきたので、そこにGCSが何らかの貢献ができたとしたら、嬉しいですね。

ーーーたしか第1回目の勉強会は2月の大雪の日に行われましたよね。

佐々木:そうそう。それでもキャンセル率が2割くらいで、皆さんすごい熱気でした。

上原:自分は「HDIfes」ですね。IT業界とゲーム業界の合同勉強会で、自分も企画について講演させてもらったことがあります。GCSはゲーム業界のコミュニティだけでなく、それ以外の勉強会にも触れられるのが良いところだと思うんです。今回も過去の活動の振り返りと、UXに関するセッションがあると聞いています。自分もHDIfesに参加して、漠然と問題意識として感じていたことが、ゲーム業界外ではこんな風に言語化されているのかと知り、たいへん参考になったのを覚えています。

粉川:もう皆さんにあげてもらったので、自分はあえて懇親会を推します。GCSでは毎回、懇親会でチャレンジをしていて、会場や趣旨を変えつつやっています。GCS2013では当時まだ珍しかったOculas Riftのデモも見られました。今回はちょっと手狭かもしれませんが、そのぶん熱気が高まると思いますし、会場の恵比寿らしい雰囲気が堪能できるのではないでしょうか。また今年はGCS本編にクロージングがないので、閉会式と打ち上げが融合したような雰囲気で盛り上がりたいですね。

長久:ちなみに佐々木さんからGCSの今後について爆弾発言もあります!

佐々木:・・・なにもないよ!

粉川:素材も撮り放題ですので、ぜひ最後まで参加してもらえれば。

これからのコミュニティ、これからのGCS

ーーーでは最後に、これからのコミュニティ活動について期待することを一言ずつ、お願いします。

粉川 勉強会ブームの中で、もっと若い人が出てきても良いと思います。最初のGCSの時、自分はギリギリ20代で、すごく新鮮でした。かなり不慣れな中で始めましたが、それでもちゃんとしたものにしたくて、いろいろがんばりました。最近は良くも悪くも軌道に乗ってきたので、運営も慣れが出てきてしまったかもしれません。フレッシュな力が下から出てくると楽しいですね。

長久 「お客さんじゃない参加者がどれだけ増やせるか」が、今の勉強会ブームの先にあるといいなあと思います。最初はお客さんで良くても、だんだん発表側や運営側に回って、全体で盛り上げていけるようになるといいですよね。既存ジャンルでは難しいかもしれませんが、新しい分野、たとえばVRなどはまだ若い分野ですし、うるさいことを言う上の世代がいないので、のびのびやれるのでは。できればC++14など、本流でも世代闘争があるといいんですけどね。

上原 参加者全員が当事者になってほしいというのはまさにそうで、ゲーム業界コミュニティでも全員でボードゲームのインストール(準備)を手伝ってもらうなどしています。それが本来の勉強会だと思うし、単に遊ぶだけでなくて、知識や経験を出す上でも主体的になってほしいですね。もう1つは「終わらせ方」が重要だと思っていて、コミュニティって運営側が燃え尽きちゃって終わることが多いんですよ。単に自然消滅しちゃうのではなくて「ミッションを達成したから終了する」という風になると良いし、そこにこだわって欲しい。そのためにはオールド世代にも、まだまだがんばって欲しいですね。

佐々木 ゲームはリアルタイムレンダリング技術の固まりで、最近は業界外にも波及しています。ゲームエンジンにしても、ゲーム業界以外のクリエイターも使うようになってきたので、業種間をこえたコミュニティが広がる可能性があります。実際、リアルタイムレンダリング技術はゲームが一番進んでいると思うんですよ。一方で僕らにはそれを受け止めるだけの懐の深さが求められています。まだまだゲーム業界は自分たちで閉じているきらいがあるので、それを受け止められるようなコミュニティ、そしてGCSでありたいですね。

GCS2014 会場の様子

ーーーありがとうございました。

筆者紹介/ 小野憲史 (ゲームジャーナリスト)
平日は主夫業に忙しいゲームジャーナリスト。 雑誌『ゲーム批評』編集長を経て2000年よりフリーランスで活動中。Webを中心に業界レポート、インタビュー、コラムなどを発表している。 2012年よりNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。

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