• レポート

専門学校 穴吹情報公務員カレッジの“教員”が、Aimingでインターンシップに挑戦!

尾形美幸(ボーンデジタル) 2015-07-16

2015年3月、徳島県徳島市にある専門学校 穴吹情報公務員カレッジ(以降、穴吹カレッジ)の教員2名が、ゲーム会社Aimingの大阪スタジオで20日間のインターンシップに挑戦しました。「学生ではなく、教員がインターンシップを体験する」というユニークな試みが、 どういうきっかけで企画され、実施にいたったのか、どんな成果が得られたのか、関係者への取材を通してご紹介します。

不採用になった学生の何が悪かったのか、確信がもてないままに指導をしている

川下秀之氏
松崎和仁氏

この“教員インターンシップ”を企画したのは、穴吹カレッジのデジタルクリエイト学科でゲームプログラミングを教えている川下秀之先生でした。 徳島県内にはゲーム会社がないため、ゲーム業界に行きたい学生たちは、大阪や東京といった県外での就職を目指して活動します。当然費用がかかりますし、情報を得るのにも苦労します。もちろんインターネットを使えば、さまざまな情報を得られますが、それらは体系化されておらず断片的です。教員たちも同様の問題に直面しており、不採用になった学生の何が悪かったのか、何を改善すれば良いのか、確信がもてないままに指導をしているそうです。そんな状況に手詰まりを感じていた川下先生は、最近活発化しているゲーム会社による学生向けインターンシップを、自分たち教員が体験できないかと考えたのです。確かに、まずは教員が実践的な技術・知識・空気感・仕事の進め方を吸収し、学生にフィードバックしていけ ば、より即戦力に近い学生を輩出できるでしょう。しかし、あまり前例のない試みに協力してくださる会社を見つけるのは容易ではありませんでした。 川下先生からの依頼を受けたNPO法人 国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)が、そのネットワークを活用して複数の会社に打診をし、Aiming大阪スタジオの協力が確定するまでには、2ヶ月弱の期間を要しました。

Aiming側の調整役となったのは、同社で人事マネージャーを務める森順子氏でした。若手の育成につながるような活動に対して同社は非常に積極的なため、良い授業をするためにインターンシップをしたいという両先生の熱意は、同社の方針に合致していました。そこで森氏は、企画・運営グループマネージャーの古谷直也氏や、開発グループマネージャーの清水聡氏に協力を依頼しました。関係者間でのSkypeを使った事前打合せの結果、 川下先生のインターンシップ(プログラマ研修)では、Aimingが運営しているオンラインゲーム『VALIANT LEGION』のバグ修正フローを体験することが決まりました。また、松崎先生のインターンシップ(デザイナー研修)では、同じく『VALIANT LEGION』に登場する武器をMayaでモデリングすることが決まりました。

森順子氏
古谷直也氏
清水聡氏

当事者に加え、相互依存関係にある組織が問題を認識することも大切

バグ修正を通して、実際のコードに触れられたことは大きな収穫だったと川下先生は語りました。松崎先生の場合は、自身のモデリングに対するデ ザイナーからのフィードバックを通して、学生のデータとプロのデータの距離を実感できたことが収穫だったそうです。さらに松崎先生は、モデリング作業と並行してAimingスタッフへのヒアリングも積極的に行い、入社間もないスタッフから学生時代の話を聞いたり、カリキュラムの内容を 相談したりもしました。Aimingでは、プロジェクトチーム単位で朝会と夕会を実施しており、各自が口頭でその日の作業予定や結果を報告しあっています。こういった制度に触れられたことも良い体験だったと、川下先生は語りました。プロジェクト管理用のデジタルツールを駆使する一方で、 顔を合わせたアナログなコミュニケーションも重視する。そのバランスの取り方が、すごく良いと感じたそうです。朝会・夕会の習慣は、穴吹カレッ ジでの学生のチーム制作に早速導入され、良い効果が出始めているといいます。自分の作業内容を口に出して報告することで、学生に自覚や責任感が生まれ、チームの連帯感も高まってきたと松崎先生は語りました。

Aimingにとっても、穴吹カレッジにとっても前例のなかった“教員インターンシップ”は、不安と緊張をはらみながらスタートしました。しかし、 川下先生と松崎先生は、学生にフィードバックすべき具体的な成果が得られたと力強く語りました。もちろん、20日間という短い期間でゲーム開発に必要な知見のすべてを吸収することは不可能です。しかも開発現場の技術や考え方は、刻一刻と変化していきます。そのため、今回の成果に満足せず、貪欲に情報を吸収し続ける姿勢が大切だと古谷氏は語りました。Aimingでは、今回の“教員インターンシップ”のような試みの必要性を感じており、今後も相談があれば協力していきたいそうです。それによって学生のレベルが上がり、ゲーム業界が活性化してくれれば、Aimingにとってもメリットとなります。そんな学生のなかから、Aimingで働きたいと思ってくれる人が出てきてくれれば、なお嬉しいと森氏は語りました。

穴吹カレッジのように、地理的な不利を抱え、情報不足や教員不足に悩む教育機関は数多くあります。今回の試みは、それらの教育機関にとっても、 大いに参考になるだろうと感じました。さらに当事者である教育機関に加え、学生の就職先となる会社を始めとする、相互依存関係にある数多くの 組織が問題を認識することも大切ではないでしょうか。そのなかから今回のAimingのように、支援や協力のために動ける組織が1つでも多く出てくるほどに、問題解決の可能性が高まってくるだろうと期待しています。

筆者紹介/ 尾形美幸 (ボーンデジタル)
株式会社ボーンデジタル所属。NPO法人 国際ゲーム開発者協会日本 理事。CG分野の書籍制作、雑誌&Webサイト記事執筆、講師などを生業とする。東京芸術大学大学院修了、博士(美術)。公益財団法人 CG-ARTS協会にて教材の企画制作等に従事した後、フリーランスの編集者・ライターを経て現職。共著書に『改訂新版 ディジタル映像編集』(2015/CG-ARTS協会)、著書に『CG&ゲームを仕事にする。』(2013)、『ポートフォリオ見本帳』(2011/ともにエムディエヌコーポレーション)などがある。
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